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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、物言わぬものたちの話

宿屋街の一角。
ぽっかりと開けた小さな広場では、古びたガーゴイル像があたりを睥睨していた。

今はその隣に、蜜色の女がひとり。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。

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良い子ね。

(綺麗なお人形を胸に抱えて、宿の扉を潜る。)
(小奇麗な外観を裏切らず煙草の匂いがあまりしないのは流石だったが、それでも壁紙には年季が染み付いていた。細かい傷の刻まれた古いカウンターの向こうで、小太りの男が眼鏡をずり上げる)

ね、お部屋空いているかしら。
(怪訝そうな視線は、私の胸元……それはそれは綺麗なお人形に。)

ええ。掘り出し物でしょう?
少し値が張ったのだけれど、ね。良い「幻想」土産が出来たわ。

ああ、それとね?
今出ていった……ステキな殿方がいたでしょ?
(ぐ、とカウンターに身を乗り出して)
あの方のこと教えていただけない?
ね、お近づきになりたいの……解るでしょ?
(その耳に唇を寄せ)

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