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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、物言わぬものたちの話

宿屋街の一角。
ぽっかりと開けた小さな広場では、古びたガーゴイル像があたりを睥睨していた。

今はその隣に、蜜色の女がひとり。
苦虫を噛み潰したような顔をしている。

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あの子ね。わかったわ。

(かつ、かつ。石畳の上を数歩進んでから、なにかを掬いあげるように、両手をガーゴイルの像へむけてかざして)
(……瞬くほどの間。はぐるま姫の掌に、ぼんやりと光を放つ、歯車のようなものが見えたでしょうか)
(溶け行くように霧散したそれは、淡い光の粒子となって、錆に着飾られた大きな身体へと吸い込まれてゆきました。)

ごきげんよう。わたし、はぐるま姫よ。
ねえ、あなたに聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら。

(像はもちろん、他人から見れば、なあんの変哲もない作り物のままなのですけれど)
(はぐるま姫は屈託なく、「彼」に向かって話しかけておりました。)
(きりりと、曲げた首は改めてカタリヤの方へと向いて)

それで、カタリヤ。わたし、何を聞けばいいのかしら。

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