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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、知りたがりの猫の話

収穫祭を控えて街はなんとなく騒がしい。
ぼんやりと何かを期待して、猫は通りに目を向ける。
――――要するに、退屈なのだった。

よく晴れた昼下がり。
大通り沿い、賑わう食堂のテラス席の一幕。

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思い出の味、なのね。ステキだわ。
(人形師と、物言わぬ愛娘との時間。甘いココアの香り。)
(……様になる、と)
(やっぱり、そう思ってしまう)
「悲しい」を感じたことがなくても、「悲しい」を感じている人とは沢山出会ってしまうものよ。
難しくて、複雑。……だってここは、混沌なのだもの。

(賑わう店内から、甘い香りのカップが運ばれて二人の前へ。)
ふふ。
お姫様とのお茶会、なんて身に余る光栄だわ。
(風が少し冷たく、陽の色が濃くなるまで、他愛のないお茶会は続く。)

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