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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、知りたがりの猫の話

収穫祭を控えて街はなんとなく騒がしい。
ぼんやりと何かを期待して、猫は通りに目を向ける。
――――要するに、退屈なのだった。

よく晴れた昼下がり。
大通り沿い、賑わう食堂のテラス席の一幕。

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ええ、こんなに親切にしてくれたカタリヤだもの。
わたしにできるお手伝いがあるなら、喜んでするわ。
(すこしの疑いもなく、今日何度めかもわからない、カクリの音が鳴りました。)
わたしにいのちが宿った日から、わたしの中で歯車の音が鳴り出したの。
だからわたし、これのこと、いのちの歯車って呼んでるわ。

本当のことを、言いたくない。それはなんだか、へんだわ。
だって嘘つきは、よくないことなのでしょう。
(ほんの子供が教わる程度の、幼稚な良識は、お姫様にも身についているようです。)

(そして最後に、得心いったように、また「カクリ」。)
わたし、ほんの少しだけれど、「悲しい」をわかった気がするわ。
「悲しい」は、飲もうと思っていたココアのカップが、目の前で割れちゃうようなことなのね。
それならわたし、「悲しい」には、なりたくないわ。

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