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梔色特別編纂室

【1:1】ちいさな姫と、知りたがりの猫の話

収穫祭を控えて街はなんとなく騒がしい。
ぼんやりと何かを期待して、猫は通りに目を向ける。
――――要するに、退屈なのだった。

よく晴れた昼下がり。
大通り沿い、賑わう食堂のテラス席の一幕。

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(他ならぬ、聞きまちがえようのない、この世界においてはとっても特徴的な自分のなまえ。)
(それを耳にして、きりりと首を動かし、アメジストの瞳を向けた先——)
カタリヤ。ごきげんよう。お茶の時間をしていたところかしら。
(蜜色の髪と猫の耳、自分を呼ぶ声。どれも覚えのあるものでしたから、はぐるま姫は呼ばれるまま、てくてくと進路をテラスへと変えてゆくのでした。)
(……はぐるま姫の体格ゆえに、テラスへの数段を一つひとつよじ登らねばならないので、到着にはいささか時間を要しているようですけれど。)
こんなところで会うなんて。そう。
偶然、というものだわ。

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