狐の鳴き声が聞こえる。

ふぅ…(ため息を一つ付き、盃を揺らす。自身の婚約者に似たような狐を見つけたものの成果は空振り。長い時間をかけても収穫が得られない事に天黒は疲れ切っていた)

(普段通らぬ道入り込んだ先、見えた社の様な建物に目を細め。興味引かれるままに足踏み入れるも見えた人影に一度止まった後緩く片手上げて)……やべ。アー、…此処のヒトか？

(ぴくりと耳を動かし、視線をそちらへ)うむ、いかにも「ヒト」ではないが此処は我の所有地ぞ。そなたは、迷子か…？まあ、子という齢ではない様だが(袖で口元を隠しながらいたずらっ子の様にふくふく笑う。)

（動いた耳に人ではない事を悟ると顎元に手をやって首傾け）ヒトではない、ねェ…獣人って所かィ。……それとも此処が所有地っつー事は、俺と同じ異世界の人間か。（興味深そうに眺めては直ぐに表情緩め）ま、細けェこたいいか。その通り迷子……いや、迷い人の方がいいか？どうにも帰り道が思い出せん。暫く邪魔しても構わねェかい。

うむ、旅人というのだったか？元の世界では神に仕えていた、つきよみ・てんこと言う。
…おや、それは難儀な。構わぬぞ、独りで退屈していたところだ。哀れな狐の話し相手になっておくれ。ここを帰る場所としてくれても良い(よい)のだぞ？(にこにこくふくふご機嫌に笑っては迷い人を招き入れる)