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審問室

果てなき砂浜

砂の白。海の青。空の青。
目の前の風景を描くなら、三色の塗料があれば事足りるだろう。見渡す限りの白い砂浜。水平線は遥か遠く。空には雲ひとつない。
「君の真似事。私なりの箱庭だ。少し寂しいが、これから充実させていけばいいさ。我々の塗料でな。……如何かな?」
仮面が傾ぐ。少しはにかむように。

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そうか。それが僕の味か。

(塩辛い手は三日月を拭い、なぞり、撫で続ける。そして静かに、耳鰭に向けて囁く。)

愛しい『人』。君は自分の味を知っているか。知っているだろうな。塗料のようでもあり、接着剤のようでもある。目眩く味覚。
しかし、何時であろうと君は甘美だ。脳髄に酩酊を齎し、耐え難いほどに精神を震わせる。それは口にした『人間』全てを狂わせる。勿論、僕もだ。
僕は今、悦びに震えている。自惚れている。『物語』を『人間』に堕とし、我が物にした。そうさせたのは何だと思う?君だ。君が狂わせた。
素敵だな。僕ら、互いに侵し合って、混じり合って。もう離れることなど出来ないんじゃないかな。

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