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現在地と地平線

魔除の石

 竜の顎が山の核を噛み砕き、二度目の爆発が起こるのにあわせ、漁師はふたたび竿を振った。
竿の先から放たれた鉱石糸は、先端の巻き輪を回転させながら竜の長い喉に群がるグレムリン目掛けて弧を描く。
 黒々とした岩肌にかぶりつく竜の首は何箇所かでうねり、無数のグレムリンが声あげる奇声と蠢きに彩られ、刻々と色味と形を変容させた。
 夜を失い、飢え続ける竜を住処に選んだ湿地の小鬼は、かれらもまた、お互いを食い尽くすまで竜の喉で踊り続ける。

「この生業も、あと100年続けば儲けもんだろう」漁師は鉱石糸の到達点をぼうっと見つめながらぼやいた。「残りどれだけ発掘できるか。50年かもな」

 ヤズィードが応えようと口を開くのと同時に、三度目の爆発が起こった。
 グレムリンたちの動きがさらに激しくなる。今度は正しいタイミングで、巻き輪がグレムリンの一匹を釣り上げた。

 漁師が腕を振り上げて鉱石糸を手繰り寄せる。薄鉛色の糸の先に黒点がちらつく。黒点はいくら近づいてきても僅かに震えるばかりで膨張もせずに、遠近感を狂わせる。空中に漂う一滴の雫のように見えた。

「竜の涙と呼んでるんだ。行商の連中がだね。しかし喉から流すかね」折に心を読んだようなつぶやきにヤズィードは内心ひやりとした。「汗じゃないかと思うがね」

 グレムリンは、漁師の手に届く頃には紛れもなく黒くて丸い石になっていた。

「帰ろう」漁師は言うと同時に立ち上がり、傍に置いていた道具を全て背負い込んだ。街へ降りていって、ガーゴイル職人に黒い眼を届けるのだ。

「全部売っちまうのか」ヤズィードは訪ねた。

「まさか。涙の相場は高くて200くらいなんだよ。あいつらは枯れない資源と思われてる」

 100年持てばいい方だ。漁師の言葉を脳内で反芻する。

「とっておきは売らないでおく。決してみつからない場所においとくんだ」

 街に降りるまでの間、会話はなかった。"とっておき"の在り方については、今もまだ時折思い出す。例えば、何かを焦がした匂いがした時に。

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(貿易都市の路上、焼きササゲ豆の屋台で飲み食いをしている)

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