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ギルドスレッド

キャリー喫茶店

【個別】手にした十字架

▼珍しくも客足が遠く、がらんとした喫茶店。
 暇を持て余す中で、からんとドアベルが鳴った。

※パーセル・ポストマン、ルチア・アフラニア

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(客が一人もいない店内。ライアも仕事に出かけ、暇を持て余しながらさりとて店を閉めるわけにもいかず。手持ち無沙汰にコーヒー・ミルを回す)
サルヴェ、マスター……あら。開店中と見て入ったのだけれど、今日はもう店じまいかしら。(何度か足を踏み入れた時とは違い、店内には静けさが満ちている事に戸惑って、入ったドアのすぐ前で立ち尽くしていた)
よお、ルチアの嬢ちゃん。今はちょうど閑古鳥が鳴いてただけだ。座りな。(入ってきたルチアへと目を向け、コーヒーミルを回す手を止める)
そう、珍しいこともあるものね。それじゃ遠慮なく。(ミルの回る音が絶えたなか、ブーツの音だけが響いた。カウンターの一角に腰を下ろして)
ま、たまにゃこんな時もあるさ。いつだって客がひっきりなしに来てちゃ、俺だって休む暇がなくなっちまう。
(肩を竦めながら、小鍋へとミルクを注ぎ入れてそれを火にかけ始める)
基本一人ならそれもそうか。お邪魔だったかしら、そうしたら。(カウンターごしに見える小鍋を眺めていた)
おっと、貴重な客なんだ、帰ってくれるなよ? 貧乏暇なしって言ってな。暇も過ぎりゃ次は稼ぎがなくなっちまう。(小鍋にココアパウダーと砂糖を入れて掻き混ぜると、ふわりとコーヒーの匂いに混じってココアの甘い匂いが漂う)
さ、できたぜ。いつものココアだ。
(小鍋からマグへと注ぎ、カウンターへ出す)
あれだけお客を集めといてよく言うわ。(喉の奥でくつくつと笑った)それじゃ遠慮なく居座らせて貰うけれど……あら、ココア? 頼んだ覚えはないけれど。(目の前に置かれた、甘い湯気をあげるマグカップを訝しそうに見つめる)
あん?(今しがた置いたココアへ目を落とし、それから座っている少女の顔を見比べる)
……ああ、悪ぃ。アンタはそうだったな。どうも嬢ちゃんを見てるとあいつのことを思い出しちまう。えーと、コーヒーだったか?
別にいいわよ、ココアでも。甘いものは嫌いじゃないし、折角作ったものだもの。無駄にするのは勿体ないわ。(マグを手にとって)……あいつ?
(悪いな、と言いながら、その手はコーヒーミルへと伸びる)
いたんだよ、ちょいと前までに。赤毛のちっこいのが。
よくこの店に通ってココアを飲みに来てた。芸術家の旦那とも仲が良くってな。
(ミルのハンドルを回しながら、その目はどこか懐かしいものを思い返すかのようだった)
へえ……赤毛の。もしかして、その子の年齢は私よりも幾つか下で、こんな十字架を提げてはいなかったかしら。(胸元をまさぐると、そこから金色の十字架を引っ張り出してきた)
(一瞥と共に、ぴたりとハンドルの手が止まる)……アンタ、それをどこで?
(十字架をカウンターに置くと、ココアで口を湿らせた)……やっぱり、見覚えがあるのね。これは私が元の世界から持ち込んだもの。故郷を離れて帝都に出るとき、父から魔除けとして貰ったものよ。
……そうか。もしかしたら、ルチアの嬢ちゃんと同じ世界の出身者だったのかもしれねえな。今となっちゃ、もう確かめようのないことだが。
(視線をルチアから、彼女の持つココアの入ったマグカップへと移して吐息する)
いいえ……。(どうしたものかと眉根が下がる。右手がスカートのポケットに伸びた。掌中にあるのは、カウンターのものと瓜二つの金十字)マスター、貴方が言っているのはきっとこれの事よね……街の故買屋で、見つけたのだけれど。
…………。(もう一つの金十字を見て、顔を顰める。ルチアの物と比べて、少しばかり汚れてしまっているが、確かに見覚えがあった)
……そうだな。多分、それのことだ。
(吐息して、カウンターから背を向ける)
出処だとかは、聞いたか?
いいえ。……ただ、そうね。故買屋の手にあったって事は、あまり良い事態にはないのでしょうけれど。
…………だろうな。(苦々しげな声で答える)
ぱったり来なくなったもんだから、もしかしてとは思っていたが。
(目を伏せて、首を横に振る)
……嬢ちゃん、一つ頼みがある。
……何かしら。(十字架から目をはずし、パーセルの背中にやった)
その十字架。大切にしてやってくれ。
(表情を見せず、努めていつもと同じような声を意識して。けれど、声には悲しみの色が確かに滲み出ていた)
……ただそれだけだ。俺が言えた義理じゃあねえかもしれねえけどな。
(その声音で、何があったのか大まかに理解した)そう、ヘレナはもういないのね。故郷……スエッソネが蛮族の手に落ちた時に死んだものだと思っていたから、この十字架を見つけた時には少し期待もしたのだけれど、遅すぎたようね。(そして、傷ついた十字架を手にとって)
ねえ、マスター。私がここに来たのはね、本当はあの子を探すためだったの。ほら、見て。この十字架の裏。この店の名前が刻まれているでしょう。(聖母への祈りの隣には、こちらの文字で『連絡先:キャリー喫茶店』と刻まれていた。頼りない筆跡は、恐らく持ち主が刻んだものなのだろう)
(目元を袖で拭ってから、十字架を見るためにルチアの方を向く)
……あのバカ、俺の店なんかを指定してどうすんだよ。
(いつもの皮肉気な笑みを作ろうとして、うまくできなくて。結局、また背を向けてしまう)
……残念だったな、ルチアの嬢ちゃんも。エゼルの嬢ちゃんとは親戚かなにかだったのかい?
ああ……あの子、そっちの名前で通してたのね。親戚もなにも、ヘレナーーエゼルは私の妹よ。
あら、誇りなさいよ。いきなりこんな異世界に飛ばされて、寄る辺がなかったあの子が一番頼りにしたのが貴方だったのだろうから。
道理で似てるわけだ。血が繋がってりゃそれもそうか……。
(思い返すにルチアと初めて会った日、それは驚いたものだった)
悪いが、ウチは託児所の類じゃあなくってね。……ま、待ち合わせ場所としちゃ悪かぁないさ。行き違っちまったのは本当に残念だが。
そりゃね。特に、私たちは二人とも母の血が強く出たみたいだし。
行き違い、それもまた運命なのでしょう。それとも、あの子の代わりに私が喚ばれたのかしら? その辺りは分からないけれど。
運命にしちゃあ皮肉が過ぎるな。操ってる神様ってのがいたら一発ぶん殴ってやりたいぐらいだ。
(無愛想ながらも荒れた言葉をあまり使わない彼が、そう吐き捨てる)
……アンタ、どうするんだ? 探しに来てたんだろ、嬢ちゃんのこと。
あら、旧い神話の神々なんてそんなものよ。身勝手で、残酷。それに……あの子、ここにいる時はきっと幸せだったんでしょう? それなら、きっと……(胸に手を当てて、目を閉じた)
(ややあってから)そうね……ヘレナの事が分かった以上、ここに来る意味もなくなったのだけれど。でも……そうね。ここがあの子の居場所だったってのなら。(握っていた十字架をパーセルに向かって差し出して)これ、受け取ってくれないかしら。
(振り向き、十字架とルチアの顔を見比べる)
……良いのか? 妹の形見の品かもしれねえんだぞ。それを俺にくれてやるよりも、アンタが持っていた方がよっぽど……
(人差し指を唇の前に立てた)それ以上は言いっこなしよ。確かにあの子の形見かもしれない物だけれど、私にはもう持つ資格もないもの。(フランク人が故郷を蹂躙したと聞いた時に、家族は皆死んだものだと思って探しにも行かなかった、その事を思って唇を噛み締めた)
それに、この場所にそれがあれば、また私が通う理由にもなるでしょ?
……そういうことかい。
(長い吐息の後に、顔を上げて。ルチアの座る席の前へと歩み寄る)
ちゃんと顔見せに来いよ。
勿論よ。そこで、こんな不義理はしないわ。(金十字を手の上に)
死んじゃあ来られなくなっちまうからな。(ルチアの手の上の金十字を手に取る)
……俺の方でも、ローレットだとかで情報を集めてみるさ。死に場所ぐらいは知っときたいだろ。
誰が死ぬもんですか。私はね、子供産んで長生きして子孫に見守られながら死ぬつもりなんだから、人生計画が狂っちゃうわ。(肩をすくめた)
そうね、そういう伝手を持っているのならありがたいわね。一度、訪れないといけないでしょうしね。
ハッ、まずは相手を作ってからそういうことは言うことだな。(ちゃ、と金十字を手に、いつもの皮肉げな笑みを作ってみせる)
わかり次第連絡するさ。
どこかにいい男でも転がってないかしらね。(ころころと笑った)
ええ、お願いね。待っているわ。(残っていたココアを飲み干した。何となく、懐かしいような、そんな味がした)
(それから二人でしばらくココアの香りを楽しんで、「またお茶会で」と別れる)(その別れ際、二つの金十字が差し込んだ陽の光を浴びて、きらりと光るのだった)

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