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文化保存ギルド

【三周年記念SS】TRIbeca

「3」を意味するTRI(トライ)だけ大文字だったりします

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 玄関を箒で掃いていると、太く長い金と銀の髪を見かけた。
 文化保存ギルドには来客が多い。師匠の人柄ゆえだろう。ココロは来客を頭に思い浮かべる。一人は色黒の……
 あと一人は共に師に仕える妹弟子だろう。卓越した戦闘センスを持ち、共に窮地を脱してきた自慢の妹弟子だ。

 さっきまで読んでいた本の主人公は、優れた能力を持つ仲間たちを強く信頼する一方で劣等感をおぼえ、悩んでいた。

――わたしは、どうだろう。

 あの子に比べて自分が優れている点がわからない。ずっと努力しているが、あの子が持っていて自分に足りないものがあるのはハッキリと、わかる。
 絶望の青での海戦。師匠と一緒に敵船に残ったあの子を羨ましく思い、頼りにしたが。

――置いていかないで……

 朱く、小さな突起物が胸の中を転がっていく。

 ふと、窓に影が差し込む。
「あ!もしかして雨降る?!」
 箒と陰りを放り出し、一気に屋上まで走りあがる。

 練達にはその日の天気がだいたい解る技術があるらしい。羨ましい。こんな突然に雨の心配をする羽目にはならなさそうだから。
 未だ黒い雲は遠く、すぐには降りそうにはないが、シーツを竿から降ろし、丸めて籠に放り込む。
 ちょっとした手合わせもできるほど床が丈夫な、柵の無い屋上。駆け回り、すべてを取り込んだつもりだったが、一枚だけ見落としがあった。

 強くなってきた風に翻る厚手の白いシャツ。
 桜の花を思わせる煙が染みついたそれを、ココロはぎゅっと抱きしめる。

 夏の日差しは、帆立の髪飾りをことさらに強く照りつけていた。

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