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文化保存ギルド

【三周年記念SS】TRIbeca

「3」を意味するTRI(トライ)だけ大文字だったりします

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●本
「おはようございます!」
 合鍵で観音開きの扉を開けて元気よく挨拶する。
 『文化保存ギルド』、ココロが師匠と慕う人が運営している。だが、当の本人はまだベッドの中であろう。挨拶に何の返事もないのは承知のうえだ。

 小部屋のクローゼットにしまってある水着を取りだし、着替える。
 水着から水着に着替えるとは陸に住む余人には理解の及び難いところだろう。彼女にとっては部屋着から仕事着に着替えた程度の意識なのだが。
 その上にずいぶんとヒラヒラした飾りと小さなリボンがついた使用人の衣装を着ると、彼女なりの準備は整ったようだ。

「はい、いっぱい食べてね!」
 朝はまず、師匠が飼っている馬にご飯をあげることから始まる。手勢を集めて騎兵隊を自任するだけはあり、愛馬は体躯が良い一等の馬だ。
 木製の桶に四角く固めてある干し草と大麦を入れ、水で浸す。この種の馬は小食で人間と同様に一日三食食べる。
 他の世話は師匠がやるだろうが、今の時間の食事はココロが自主的に与えていた。

 薪割り、水汲み、細々した衣料の選択、消耗品の買い付けを済ませると太陽が一番日差しの強い時間を迎えていた。
 細々とよく動く。特にやれと命じられたわけではないが、概ね面倒くさくて地味で目立たない、そんな仕事が担当である。

 忙しないが、そんな中でも楽しみは欠かさない。西側の書庫は何の為にあるのかわからない書物がたくさんあり、時間を見つけては読んでいた。この建物の前の所有者が残していった本らしい。
 机の上に置いてあったままの一冊を手に取る。
 オイゲン、という名前の主人公が思いがけず軍隊を率い、かつてのライバルたちと共闘して強大な敵を打ち破る痛快な軍記物だ。
 男女を問わず、弱い側が仲間と協力して強い側に勝つストーリーは人気がある。しかし、この話は過去にあった出来事だろうか、それとも完全な創作だろうか。学校で教わる世界史程度の知識ではわからなかった。
「うーーん、こんど聞いてみようかな。なんか色々詳しいし」
 誰も居ない書庫で独り言をつぶやく。そう、襤褸のクロークを着たあの人に。

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