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黒蓮庵

【雑談ですよ】まあるい月影

もし貴方が黒蓮庵に足を踏み入れたならば、
この様な光景が目に入るでしょう。
ひとつは窓。
外からも見る事の出来た黒塗りの格子窓に、奥には円窓。
所謂和室と呼ばれる造りのようです。
ひとつは本。
低い2つの本棚に、綺麗に並べて入れられています。
…内容には偏りがある様ですが。
ひとつは宝石。
様々な宝石達が部屋の至る所で煌いています。
最後に白。
夜色に染まった庵の真ん中で、真白い少女が静かに佇んでいるのです。

「――ぁ…。こん、こんばん、は…?」
「もしかして、迷い込んでしまいましたか?」
「今日は綺麗な星月夜なの。どうかゆっくりしていらして」
「あまり人と話した事がないのです。宜しければ貴方の御噺を聞かせてくださいな」


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“今”は夜の帳が下りていますが、明るいうちに遊びに来てくれても嬉しいわ。

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はい、私も……旅人です。この間の、大規模召喚で……やって来ました。
でも……この世界に、来る前の、こと。自分が、誰なのかも……覚えてなくて。
だから、あんまり……自分のこと。話せることが、ないんですが……
普通の人と、ちょっと違う……体なのは、何となく、分かってます。
(申し訳なさそうに視線を落とし。透けているとの指摘通り、魔力そのものと言える髪がふわりと揺らぐ。まるで燃え立つ炎の様だが、特に家具に燃え移ったり熱を発するような様子はない)

はい……見るもの。聞くもの。みんな……新鮮です。
お茶も、そうですが……この、不思議な作りの、お家とか。
ベラさんがいた、世界の……由来、なのかな?
(和室の構造が物珍しいのか、見慣れない文化に興味を示してじっと見つめる。
新たな来訪者を出迎えに行く家主と、本棚の書に挑む盗賊の青年を見守りながら、少女は口に合ったのだろう、緑茶を頂いて人心地をついては吐息を漏らしていた)

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