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幽玄のエルエネッセ

茶の間

 著名な墨画師とて、秋冬に防寒もせずに凍える山水を描くわけではない。
 神に奉る曲から着想を得た彫刻家とて、劇場の帰りがけに飯屋に寄った位はしただろう。

 居間兼茶室の+床。
 炉と棚が置いてあり、茶碗や書道道具、着替えなどが納められている。

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 4畳半ほどの小さな部屋に入ると、いぐさの香りが鼻腔をくすぐった。
 加えて、お香が焚かれているため、あまり五月蠅くならないシダーウッド系の香りだ。虫除けにもつかわれるお香である。
 庵主は、のんびりと朱泥の横手ティーポットにお湯を注ぐ。緑色の玉液を飯茶碗に垂らすと、シダーウッドの香りが退散して御茶の清い香りが場に存在感を出した。 
 茶碗は、楽焼に分類される飯茶碗だ。
 釉薬をつけていないので素地の淡いクリーム色をしている。
 注がれた緑の御茶との組み合わせは、どこまでも淡い色をしていた。

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