～グレイシアからの視点～

「おじさまおじさま！今日ね、散歩中に猫が居たの！」
「はいはーい、静かにしますー！」
食事中だというのに、賑やかな事だ。

何度したかわからない注意をして、再び食事に戻る。
ルアナと…勇者とこうやって食事を摂るなど、ほんの数年前までは夢にも思わなかった。

あの大召喚から早二年。
当初は子供になってしまった勇者に頭を抱えたものだが、この生活にも慣れたものだ。

しかし、このままルアナを育て、理想とする勇者と出来るかどうか…
彼方で見た勇者は、それなりに様になっていた…ように思う。

何年此方に居る事になるか、再び彼方に戻る際ルアナがちゃんと元に戻るかどうか。
全く不明である以上、出来る限りルアナを立派に育てる必要があるだろう。

理想の勇者となった先に、望んだ結末が訪れると良いのだが…

「この料理をあのテーブルへ、それが終わったら皿洗いだな」
「ぶー、おじさまのけちー」
理想の勇者の前に、まずは真っ当な成長を。
…とりあえず、今日はフルーツタルトでも用意するとしよう。