屋敷の入り口に看板が立っている。

『何でも良いのでエサください』

汚い字を解読すれば、いつの間にかニワトリが看板の上にいてじっとあなたを見つめている。

（遠くで砂埃が舞う……いや、向かってくる。風の悪戯なんて詩的なものでなく、人為的なものだと気付かせるのは屋敷の前に“それ”が来てからだ）
　ここ、だよなー。うん。丘の上。屋敷。間違いナイ。
　……おっ、何か居る……タンパク質？
　あ、餌か。ナンでもいい……う～ん。ま、いっか。
（鶏を見て言い放った一言は、デリカシーの欠片も無いものだ。頭頂れ揺れる耳と細長い尻尾、猫の獣種の姿をしていれば、尚更洒落にならない。看板の字に気付けば、パン屋で貰ったパンの耳を千切って差し出していった）