ギルドスレッド
スレッドの一部のみを抽出して表示しています。
手記
間違いなんて、起こったこともないけどねえ。(第一、村のひとたちは絶対に、私の関係者だと知れ渡っている彼を泊めてくれやしないだろう。小さな村に宿屋などあるわけもなく、友人と野外に追いやるなど冗談ではない。となれば、両親の寝室が空いたままのこの家に泊めるしかないではないか)(内心でそうボヤキながら、休憩を終えて腰を上げる。向かうのは、先ほど手紙を取り出した机だ) さて、そうとなればお仕事もすこし、片づけておかなきゃ。
キャラクターを選択してください。
- « first
- ‹ prev
- 1
- next ›
- last »
国の外れに、その森はあった。
名はなんといったろう。森の入り口にあたる小さな村のだれもが、名前など知りはしない。
――森は、森。
どうやらよくない謂れを持つらしいその森を、村人たちはあまり好ましく思ってはいないようだった。
森のかぼそい小路を、途中でさらに脇道へ逸れると、やがて小さな泉に行き当たる。
あたりには小剣のような葉を持つ植物が群生し、季節になると素朴な、けれど美しい花を咲かせるのだが――今はまだ、その盛りには遠い。
泉のほとりには、小さな家が一軒建っている。
木材で作られた家はこの辺りではありふれた造りで、こじんまりとして、どこか忘れ去られた風情を持ちながらも、廃屋というふうではなかった。
日が昇って、しばらく。
朝もやが薄れ始めたその家の扉が、不意に開かれた。
-