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手記

【RP】前略、

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国の外れに、その森はあった。
名はなんといったろう。森の入り口にあたる小さな村のだれもが、名前など知りはしない。
――森は、森。
どうやらよくない謂れを持つらしいその森を、村人たちはあまり好ましく思ってはいないようだった。

森のかぼそい小路を、途中でさらに脇道へ逸れると、やがて小さな泉に行き当たる。
あたりには小剣のような葉を持つ植物が群生し、季節になると素朴な、けれど美しい花を咲かせるのだが――今はまだ、その盛りには遠い。
泉のほとりには、小さな家が一軒建っている。
木材で作られた家はこの辺りではありふれた造りで、こじんまりとして、どこか忘れ去られた風情を持ちながらも、廃屋というふうではなかった。

日が昇って、しばらく。
朝もやが薄れ始めたその家の扉が、不意に開かれた。

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(懐かしさと、すこしだけの寂しさ。思い出すだけで涙がこぼれる時期は、とうの昔に過ぎ去った。いまはただ、愛おしいだけだった。――そう、父と母だけではなく)

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