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宿屋【金色流れ星】

宿屋2階『【比の部屋』

宿屋2階にある比のお部屋。落ち着いた暖かみの感じられる雰囲気の過ごしやすい空間となっている。ベッド、机、クローゼット等の家具は一通り揃っており、不自由はしないだろう。
ベッドにはデフォルメされたリスのぬいぐるみが置かれている。

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【休日】

 先日の、境界からの依頼の報告書を受け取って、あの時のことを思い出す。目まぐるしく過ぎていった時間だ。
 交渉事は忍耐だ。何処へ行っても断れる程度、比は慣れている。どんな物を売るにしたって、顔を売る外に方法はないのだ。交渉材料はそれなりで、実績のない売込みに応じてくれた物がいた分、マシな方。今度同じ様な仕事があったら、模擬演技くらいは仲間に頼もうと思う。
「……つまり、幻想の王都は、本当に関心がないんだよね」
 請け負ったのはバルツァーレク領の支配人だ。
 教会からの依頼だと伝えた。教会の名前で信用がないのならば、それはもう孤児なんて、どうでも良いのだ、彼らは。一軒だけ貸してくれそうな所もあったが、間がないというのは単なる口実のような気もする。
「……」
 まあでも、ちょっとヒネたあの子に、道を示すくらいは出来ただろうか。
「繋がりって、本当色々あるんだよね」
 預かり知らぬ所で勝手に蠢く感情と打算が束。
 良きにしろ悪しきにしろ、それらは鎖の様になって身体を絡め取る。良い表現ではないだろうが、身動きが取れなくなる事だってある。良いことの方が多いのだが。
「……あ」
 今度お礼を言いに行かないと。手伝ってくれた印刷会社、出店希望者、盛り上げてくれた商店街。無茶を請け負ってくれたバルツァーレクの支配人にも。細かな挨拶は大事だ。流石に支配人に直接会う時間はあまり無いだろう。
 となると手紙。デスクに片付けた名刺、この宿の住人を思い出して。
「しっかり者なんだよねえ」
 幾らになるだろうか。国境超えではないし、安いと願いたい。

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