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魔王神殿ズィンゲンレーゲル

レイン・ラディアの部屋

(一言でいうならば異質。
 豪奢な王座、神殿とはかけ離れた部屋。
 鳥かごが存在するが、鳥は存在せず
 とこにも通じない電話が1つ。
 机の上には、日記と万年筆。チョコレートが置いてある。
 ベッドにぽつんと古びたドラゴンのぬいぐるみがある
 ドラゴンにしては、その羽根は蝶のようだが…
 出入り口には、歯車とそれを回す取っ手。
 これを回すことで、ベッドに檻を下ろす仕組みとなっている。

 ―ーつまりここは、牢屋であった。)

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(レインの言葉に俯き)
……使い捨ての方が、マシだったと私は記憶しているよ。
選定の儀式を終えて暫くした勇者達は誰もが驚異的な生命力と超人的な身体能力、魔力を誇る。
戦場での死を除けば不老不死とも思える肉体を手に入れていたからね。
…尤も、長生き出来た勇者は一人しか知らないが。

………。
(レインに頭を撫でられながら、ゆっくりと呼吸をする。何かを思い出す事を速やかに済まそうとする様に)
成りたかったが、叶わない夢だったと……私は思う。
……私は客観的に見れば、道を誤ったのだ。

私が勇者を名乗り出した齢十九の時。それも私の誕生日の朝の事さ…私と同じく病弱だった妹が、ベッドの中ではなく、机に向かって大好きだった魔法の本を開きながら冷たくなっていたのは。

……私はその日を境に、最早誰もいなくなった屋敷を売り払い、父の残した少しの財産を全て使って旅に出たのだよ。
勇者を自称しながら、ね。

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