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アルトバ文具店
●ポシェティケト・フルートゥフル様(p3p001802)
鹿の朝ははやい。夏はものすごく早い。
森に住んでいる早起き鳥たちよりもまだ早く、夜更かし気味のカエルや虫たちとはすれ違う。しぃんと静まり返った澄んだ紺色の空気を吸いながら、ぱっちりとした灰色の目を開く。
小さくて金色の相棒はすやすや夢のなか。
朝ごはんのパンの匂いが、この精霊の目覚まし時計なのだ。
ポシェティケトは大きくてふわふわしたマシュマロクッションの中から白い首を持ち上げると、まだ誰も起きていないことを確認して立ち上がった。
銀毛の流れを整えるように全身を振れば、もうすっかり行動モードだ。
鹿のかわいい寝室は木の上のなかでも、特にてっぺんにあるのでちょっと窓から外を見渡せば、ポシェティケトのおうちがどうなっているのかすぐに分かる。
今日はどんな日になるのかしら。
依頼はないし、待ち合わせもない。
どこかに出かけても良いし、どこにも出かけなくても良い。
ポシェティケトは自由だ。
ゆっくりお風呂に入るのも好きだけれど、こんな夏の朝は朝露のシャワーが一番と上機嫌に階段を下りていく。
ほとりの湖の水を一口二口飲むと、まだ暗い森を散歩する。
茂る夏草の生き生きとした葉がひづめを濡らし、黒々とした森の枝が夜から恵まれた雫をぽとぽとと落としては、ポシェティケトの身体をしっとりと濡らしていく。
少しだけのんびり屋さんの蛍や、寝ぼけ眼の精霊たちが数匹、豆電球のように緑色に光っては消えいった。
今日も暑い日になりそうね、とポシェティケトは空を見た。森の途切れ目から見えた小さな窓空では薄くて白い星が瞬いている。
『ごらん。お空に見えるあれは全部、金平糖さ』
『えるまーとはんぶんこしても、おなか、ぱんぱんになっちゃうわねぇ』
『そうだねぇ』
子育てが苦手な魔女は、鹿と同じくらい朝が早かった。
『しかが、おおきくなったら、ぜんぶたべられるかしら』
『どうだろうね。ためしてみるかい?』
『ううん。しかは、はっぱのほうがすき』
空の読み方に、季節の感じ方。そういった森の変化を教えてくれた。
星が、金平糖では無いと知ったのはいつだったのかしら。
気がつけば知っていた。知らないうちに蝉がお外で羽化するように、ごくごく自然に変化はおこる。
朝露にしっとりと毛皮を濡らし、苔の柔らかな感触を楽しみ、終わり頃の甘くなったベリーや生命力の溢れる若芽を少し摘んだ頃には、森の裾野を薄らと白い光が照らしだす。
今日の朝ごはんはベリーのパンケーキにしましょう。
赤い実がたわわに実った枝を咥えて、とこらとこらと鹿は家への道を戻り始めた。
Thank you!
鹿の朝ははやい。夏はものすごく早い。
森に住んでいる早起き鳥たちよりもまだ早く、夜更かし気味のカエルや虫たちとはすれ違う。しぃんと静まり返った澄んだ紺色の空気を吸いながら、ぱっちりとした灰色の目を開く。
小さくて金色の相棒はすやすや夢のなか。
朝ごはんのパンの匂いが、この精霊の目覚まし時計なのだ。
ポシェティケトは大きくてふわふわしたマシュマロクッションの中から白い首を持ち上げると、まだ誰も起きていないことを確認して立ち上がった。
銀毛の流れを整えるように全身を振れば、もうすっかり行動モードだ。
鹿のかわいい寝室は木の上のなかでも、特にてっぺんにあるのでちょっと窓から外を見渡せば、ポシェティケトのおうちがどうなっているのかすぐに分かる。
今日はどんな日になるのかしら。
依頼はないし、待ち合わせもない。
どこかに出かけても良いし、どこにも出かけなくても良い。
ポシェティケトは自由だ。
ゆっくりお風呂に入るのも好きだけれど、こんな夏の朝は朝露のシャワーが一番と上機嫌に階段を下りていく。
ほとりの湖の水を一口二口飲むと、まだ暗い森を散歩する。
茂る夏草の生き生きとした葉がひづめを濡らし、黒々とした森の枝が夜から恵まれた雫をぽとぽとと落としては、ポシェティケトの身体をしっとりと濡らしていく。
少しだけのんびり屋さんの蛍や、寝ぼけ眼の精霊たちが数匹、豆電球のように緑色に光っては消えいった。
今日も暑い日になりそうね、とポシェティケトは空を見た。森の途切れ目から見えた小さな窓空では薄くて白い星が瞬いている。
『ごらん。お空に見えるあれは全部、金平糖さ』
『えるまーとはんぶんこしても、おなか、ぱんぱんになっちゃうわねぇ』
『そうだねぇ』
子育てが苦手な魔女は、鹿と同じくらい朝が早かった。
『しかが、おおきくなったら、ぜんぶたべられるかしら』
『どうだろうね。ためしてみるかい?』
『ううん。しかは、はっぱのほうがすき』
空の読み方に、季節の感じ方。そういった森の変化を教えてくれた。
星が、金平糖では無いと知ったのはいつだったのかしら。
気がつけば知っていた。知らないうちに蝉がお外で羽化するように、ごくごく自然に変化はおこる。
朝露にしっとりと毛皮を濡らし、苔の柔らかな感触を楽しみ、終わり頃の甘くなったベリーや生命力の溢れる若芽を少し摘んだ頃には、森の裾野を薄らと白い光が照らしだす。
今日の朝ごはんはベリーのパンケーキにしましょう。
赤い実がたわわに実った枝を咥えて、とこらとこらと鹿は家への道を戻り始めた。
Thank you!
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途中まで書かれた礼状だ