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アルトバ文具店

PPP五周年【和紙】

机の上に和紙がある
途中まで書かれた礼状だ

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●ルブラット・メルクライン様(p3p009557)

「友人が出来た」
「は?」
 ルブラットの衝撃的な発言に、マーレボルジェはティーカップを取り落とした。美しい朱色の絨毯に紅茶の染みが血だまりのように広がっていく。
 綺麗に割れた白い破片が砂浜の貝殻のように床に散らばっているのを、ルブラットは無感動に見下した。
 一方でマーレボルジェといえば感情を写さない義眼の瞳が限界まで見開かれている。ついでに口も開かれている。
 上から下まで何度も、座るルブラットをじろじろ遠慮なく見つめてから、ようやく口を開いた。
「剥製の?」
「違う」
「なら死体ね、きっと」
「れっきとした、生きた、人間だ」
 ルブラットは、少しばかりの非難をこめてマーレボルジェの言葉を否定した。一言一言をはっきりと発声してから、自分に問いかけるように小さく呟く。
「そういえば特徴から人間と断定していたが改めて彼の種族を聞いた事が無かったな」
「人間ンッ!? いま、人間の、友人って言ったのかしら?」
「言った。友人、のはずだ。……何故そこまで驚く。君は一体私をどう思っているのかね」
「社会不適合者」
 言い返そうとしたのか。ルブラットは少しだけ身を乗り出すように身体を前に倒した。そしてぜんまいの切れた人形のように一度身をギクリと止め、ゆっくりと背もたれに体重を預け直した。
「そうだな」
「そこは素直に認めるのね」
「素直もなにも」
 腹の上でゆっくりと指を組むと、堂々とした面持ちでルブラットはマーレボルジェを見つめ返した。
「私は本当の事しか言わない」
「知ってる。だから聞いたの」
「ん?」
「それで」
 からかわれているのだとルブラットの聡明な頭脳が気づく前にマーレボルジェはルブラットの始めた話の続きを促した。
「どんな人間よ」
「前に、ここに飾る絵を描いたらしい。信じられないほど無垢な青年だ」
「へぇ」
 カメーナエ画廊の一室に設けられたカフェテーブルからは様々な絵画を見る事ができる。その中には過去、イレギュラーズが描いたものもあるそうだ。興味深そうに絵画を一瞥してから、ルブラットは真正面からマーレボルジェを見据えた。
「そして、君の蒐集箱を共に壊した仲間でもあるな」
「頭痛のする情報をどうもありがとう」
「瀉血するかね」
「結構よ」
「そうだ。瀉血と言えば今度ヒルのぬいぐるみを作ってもらうことになった。出来たらも君に見せよう」
「その奇怪な受注を受ける職人は存在するの?」
「作ってくれると言っていた」
 ルブラットが上機嫌なことは、声を聞けばすぐに分かった。
「蒐集箱を毀した? ぬいぐるみ? まさか、ねぇ……」
「カメーナエ画廊カフェ、そろそろ閉店のお時間でー……わぁ」
 小型犬がちょこちょこと入ってくる。そして絶望したように二人の足元に広がる染みと割れたティーカップを見つめていた。

Thank you!!

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