ギルドスレッド
スレッドの一部のみを抽出して表示しています。
アルトバ文具店
●シラス様(p3p004421)
――17。
シラスは二枚の手札を一瞥する。
クラブのキングが一枚、スペードの7が一枚。
17。相手次第で充分に勝ちを狙える数だ。
「ヒット」
けれどもシラスは「寄越せ」と言わんばかりの挑戦的な瞳をディーラーに投げかけた。
誘うように人さし指でテーブルを叩けば、緑のフィールド上をカードが滑る。
ダイヤの4、足して21。
「ブラックジャック、プレイヤーの勝利です」
「どーも」
ディーラーが勝利を淡々と宣告すると、勝者は椅子に座ったまま綺麗ににこりと微笑んだ。
既に卓の上にはラムネ菓子のようなカラフルなコインが積み上がり、統計グラフのような斑模様を描いている。
「もっと強気に行かないと勝てないぜ?」
黒髪に黒目。臙脂色のジャケットにナロータイという出で立ちの青年は、まだ少年期の面影を残した微笑みをディーラーへと向けた。
フルートグラスに満たされたピンクゴールドの甘やかな液体を一気に飲み干し、空いたグラスをフロアを流していたバニーガールの銀盆へと乗せる。
「分かってはいるんだけどねぇ……君と相対していると勝てる気がまるでしないというか」
そもそも僕は安定志向なんだよ、とディーラーは半笑いで告げた。
「普通、17でヒットする?」
「プロなら泣き言は無しだ」
黒髪の青年は指の隙間にコインを潜らせて遊ぶ。
そして、幸運を呼ぶ黒猫のように不敵に笑った。
「錬達のカジノへ客として潜入し、内部を調査する」
行方不明者探しの依頼であったが全員の消息がこのカジノで途絶えている事が判明した。
表面上の調査では何も出無かったが、アンダーグラウンドの世界を知るシラスには此のカジノの澱んだ空気が、ただの賭博場ではないと感じ取っていた。
「失踪者に共通している特徴は『最後に勝っていた』。だからと言って、わざと負け続けなくてもいいんだが」
「本気だよ……本気で負け続けてるんだ……」
「そりゃ失敬」
シラスが勝ち続けているのは純然たる実力からだ。他にも数人のイレギュラーズが店側の人間として変装しているが、どこの卓でもシラスが勝利していることが多い。肩を竦めるシラスに、ディーラーはそっと耳打ちをする。
「店側が動き始めた」
「了解。始める」
シラスはいかにも飽きたと言わんばかりの表情で立ち上がると、物色するようにフロアを見渡した。
クラブのK、店側の従業員は13人。
スペードの7、その内攻撃手段を持っているのが7人。
ダイヤの4、遠距離型の武器が4台。
一見すると丸腰のシラスに向かって、大柄な黒服の男達が背後から忍び寄る。
だが煌めくコインもカードも、シラスにとってはただの武器。投擲されたコインを眉間にめり込ませて、一人目が音も無く落ちた。
ざわつくカジノ内の中で、シラスだけが凪のように立っている。
楽し気な表情を隠そうともせず、ただ獰猛に獲物を真正面から見据えていた。その手にはいつの間にかカードがワンデッキ分収まっている
「カードナイフっての、一度やってみたかったんだよな」
死の宣告をのんびりと告げ、シラスはゆっくりと足を踏み出した。
Thank you!
――17。
シラスは二枚の手札を一瞥する。
クラブのキングが一枚、スペードの7が一枚。
17。相手次第で充分に勝ちを狙える数だ。
「ヒット」
けれどもシラスは「寄越せ」と言わんばかりの挑戦的な瞳をディーラーに投げかけた。
誘うように人さし指でテーブルを叩けば、緑のフィールド上をカードが滑る。
ダイヤの4、足して21。
「ブラックジャック、プレイヤーの勝利です」
「どーも」
ディーラーが勝利を淡々と宣告すると、勝者は椅子に座ったまま綺麗ににこりと微笑んだ。
既に卓の上にはラムネ菓子のようなカラフルなコインが積み上がり、統計グラフのような斑模様を描いている。
「もっと強気に行かないと勝てないぜ?」
黒髪に黒目。臙脂色のジャケットにナロータイという出で立ちの青年は、まだ少年期の面影を残した微笑みをディーラーへと向けた。
フルートグラスに満たされたピンクゴールドの甘やかな液体を一気に飲み干し、空いたグラスをフロアを流していたバニーガールの銀盆へと乗せる。
「分かってはいるんだけどねぇ……君と相対していると勝てる気がまるでしないというか」
そもそも僕は安定志向なんだよ、とディーラーは半笑いで告げた。
「普通、17でヒットする?」
「プロなら泣き言は無しだ」
黒髪の青年は指の隙間にコインを潜らせて遊ぶ。
そして、幸運を呼ぶ黒猫のように不敵に笑った。
「錬達のカジノへ客として潜入し、内部を調査する」
行方不明者探しの依頼であったが全員の消息がこのカジノで途絶えている事が判明した。
表面上の調査では何も出無かったが、アンダーグラウンドの世界を知るシラスには此のカジノの澱んだ空気が、ただの賭博場ではないと感じ取っていた。
「失踪者に共通している特徴は『最後に勝っていた』。だからと言って、わざと負け続けなくてもいいんだが」
「本気だよ……本気で負け続けてるんだ……」
「そりゃ失敬」
シラスが勝ち続けているのは純然たる実力からだ。他にも数人のイレギュラーズが店側の人間として変装しているが、どこの卓でもシラスが勝利していることが多い。肩を竦めるシラスに、ディーラーはそっと耳打ちをする。
「店側が動き始めた」
「了解。始める」
シラスはいかにも飽きたと言わんばかりの表情で立ち上がると、物色するようにフロアを見渡した。
クラブのK、店側の従業員は13人。
スペードの7、その内攻撃手段を持っているのが7人。
ダイヤの4、遠距離型の武器が4台。
一見すると丸腰のシラスに向かって、大柄な黒服の男達が背後から忍び寄る。
だが煌めくコインもカードも、シラスにとってはただの武器。投擲されたコインを眉間にめり込ませて、一人目が音も無く落ちた。
ざわつくカジノ内の中で、シラスだけが凪のように立っている。
楽し気な表情を隠そうともせず、ただ獰猛に獲物を真正面から見据えていた。その手にはいつの間にかカードがワンデッキ分収まっている
「カードナイフっての、一度やってみたかったんだよな」
死の宣告をのんびりと告げ、シラスはゆっくりと足を踏み出した。
Thank you!
キャラクターを選択してください。
- « first
- ‹ prev
- 1
- next ›
- last »
途中まで書かれた礼状だ