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アルトバ文具店

PPP五周年【和紙】

机の上に和紙がある
途中まで書かれた礼状だ

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レイリー=シュタイン様(p3p007270)

「助かったわ」
「助かったよ」
 楽団の音楽に合わせて打ち鳴らされた豊満なワイングラスが、味わい深い音を響かせた。
 昼には真珠のような浜も、日が沈めば静寂なる射干玉の波音を奏でる。開拓も二周年を迎え、フェデリア島・シレンツィオリゾートでは毎夜、豪奢なパーティーが開かれていた。
 そんな中、酒と料理が自慢のペアリングディナークルーズ待機列で可愛らしい悲鳴があがった。
 予約したは良いが、受付の黒服に「二名様一組ですので、お一人様にはご遠慮頂いています」と止められた淑女だ。
 一見すると白いウエディングドレスにも見える、ネグリジェのような優美なシルエットの下には艶やかなる水着の輪郭が透けて見える。白い肌と美貌は日が暮れても陰ることはなく、むしろ一層輝きを増すようだった。金の髪を彩る大輪の花は太陽よりもなお赤く咲き誇り、清楚なかぐわしい香りを漂わせている。レイリー=シュタイン。戦の時は不動なる銀壁が、あまりのショックにぐらりと傾いだ。
 ほぼ同じタイミングで「ええ!?」という悲鳴を聞いたレイリーは、自分と同じような表情の男を見つけた。明らかに「憔悴」と書かれた顔である。
「ねぇ」
 レイリーは意を決して話しかけた。
 むしろ緋色の瞳には逃がしてなるものかと言わんばかりの力強さが宿っている。
 振り返った男もまた、レイリーの姿を見てハッと瞳に希望を取り戻した。
 同時に頷く。
 例えよく知らぬ間柄であろうと、このディナークルーズに惹かれた者同志。言葉はいらなかった。
「「相席、お願いします」」

「ん~、美味しい~~っ」
 レイリーが頬を緩めるのは料理ではなく提供された酒類である。
 料理を楽しむためか。
 アルコール度数が低いとは言え、けして少なくないグラスがレイリーの胃へと収まっていく。
 素早く、けれどもけして下品ではない飲み方だ。
 乾杯のスパークリングから食前酒の果実酒。アクアパッツァと辛めの白ワイン、熟成肉と若々しい赤ワイン、チーズと大吟醸。
 様々なペアリングを試しては、これは良い。あっちの方が美味しいかもと吟味していくレイリーの姿を見れば、企画した者たちも本望であろう。
 美味しそうに酒を呑むレイリーに、同席していた文は嬉しそうに目を細めた。
「ワインが好きなの?」
「ええ。というか、お酒全般に目が無いの」
 気品のある所作で新しい杯に酸素を含ませながら、レイリーは少女のように無邪気に微笑んだ。
「文殿は?」
「僕は料理が目当てだったんだけどね。此処のお酒が思いのほか美味しいから飲みすぎちゃった」
「そうね。どれも美味しいから、ついつい手を伸ばしちゃう」
 米から作ったという透明な酒はワイングラスの中では水と変わりないように見える。
 花冷えと呼ばれる温度で口直しに供されたそれはレイリーを誘うようにシャンデリアの下で薄らと檸檬色に輝いていた。
「日本酒ってグラスで飲んでも良いのね。なら次はそれをお願いしようかしら」
「常温も美味しかったけど、今の時期だとやっぱり冷たいのもお勧めだよ」
「温度、温度……ふむふむ」
 その言葉を聞いたレイリーは花火のように華やぐ大輪の笑顔を浮かべた。
「飲み比べがいがあるわねっ!」
「ぜんぶ飲むのっ!?」

Thank you!

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