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アルトバ文具店

PPP四周年【手紙】

机の上に書きかけの手紙がある。
四年という歳月は短く、長い。

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『恵風の筆』(イーハトーヴ・アーケイディアン様)

「うーん」
(?)

 本を前にして唸るイーハトーヴの姿は珍しいものでは無い。
 書物のなかにある知識を求め、時には夜が更けても難題を追いかけるイーハトーヴの姿をオフィーリアはよく知っている。(そして何度もたしなめているというのに、この子ったら! 一度集中しだしたら全然人の話を聞いていないんだもの) 
 ただ今回は少しばかり様子が違うようだ。

(それ、文具屋さんが借してくれた本でしょう) 
「うん!」

 イーハトーヴは本から視線を外した。
 太陽の花に似た笑顔が弾け、頷いた拍子に紅紫の前髪がゆるりと形の良い額を撫でる。
 実際には「借りた本」というよりも「相手に押し付けられた本」といった方が正しいのだが
 そこは指摘しない方が良いのだろうとオフィーリアは空気を読んで会話を続ける。

(何か分からないところでもあるの?)
「分からないというか、うーん」

 イーハトーヴは苦笑に近い微笑みを浮かべながら歯切れ悪く答えた。
 文具屋から借りる本と言えば童話か詩集か。
 今のところ6:4の割合で童話の方が多めであるが、今日は詩集であったようだ。

「これ、春の詩集なんだって。春風と仲良しな白兎の詩だとか、優しい雲雀の止まり木になる若木とか、兄と弟が日によってくるくる変わる四月と五月の詩とか。素敵な詩がいっぱい、いーっぱい書いてあるんだけど……」
(ええ)
「これを読んで、俺の事を思い出したって文お兄ちゃんが言うんだ。どういう意味だと思う、オフィーリア?」

 本当に困った様子のイーハトーヴを見上げ、オフィーリアは沈黙した。
 沈黙して、ここ最近のイーハトーヴの行動を思い返して、なおかつ熟考した。

(……そのまんまの意味じゃないかしら?)
「そうかな」
(きっとそうよ)
「ふふっ、だったら嬉しいなぁ」
(ねぇ、白兎の詩ってどんな詩?)
「ちょっと待ってね、えーっと」

 嬉しそうに笑うイーハトーヴの膝の上。甘えるようにオフィーリアは背中をくっつけた。

――Thank you !!

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