鏡の世界へ、ようこそ ――そして私は気づいたのだ。
あの椅子も、あの絵画も、今私に手を振った少女も此の場に存在しないのだと！
有り得ない！此処に無いモノが何故鏡の中に写る？
どうなっているんだ、もしかして、嫌だ、でも、それはつまり、
（ここで文は途切れている）

―――名も知らぬ誰かの手記より


……という導入の上に堂々と書かれた【千客万来】の看板。
そしてその隣に【水鏡】の表札が。
どうやら元は遊戯施設だったところを如何にかこうにかして手に入れたようだ。

今はただの遊戯施設兼個人宅。
大丈夫よ、確かにその椅子もその絵画も鏡の中にしかないけれど。
時々その場に居ない誰かが鏡の中をすうっと通ったりするけれど、気にする事は無いわ。