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異世界歴史学研究調査事務所

応接室の日常3

 外面ばかり整えている異世界歴史学研究調査事務所だが、その実その取り繕った立派さを発揮する事は滅多にない。何故ならそれを利用する立場にある男が非常に面倒臭がりであり投げ遣りだからだ。
 例えば、己の伝記を書かせるのに大枚をはたきそうな金持ちの上客であれば、男は部屋を改めて整え、不精髭を剃り、髪の毛をキッチリ撫でつけて出迎えるだろう。
 だがそう言った上物の依頼客は事前の予約を必須としている。『忙しい≒凄い繁盛してますよ』アピールをする為にもそこは徹底しているし、そもそもそう言う類の客は普通事前に連絡か人を寄越すのでどの道飛び込みはほぼあり得ない。

 よって、平時の応接室はつまり、男や男に近しい者にとってはのんべんだらりだらけるための休憩スペースに他ならないのである。

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……ああ、うん。まあ……人の想いと努力が篭った物の価値を知る事は、そしてそれを誇らしく思う事も、その、素晴らしい事だとは思う。
(ちょっと自分に言い聞かせる様に言葉を絞り出しつつ頷く)

お祭り参加ついでに…………ついでに………
(いっそ戦慄すら篭った声でうわ言めいて反復)
……それは司祭の醍醐味と言うより地回りのヤ……い、いや、何でもない。
いやいや、うん。いや。ルールに乗っ取って優勝して貰った物だしな……
うん。別に本来何も問題のある物では無い……筈……
(確認する様にそう呟くが、躊躇なく豪快に呑んでる聖職者(と思しき生物)を前に見る見る声から自信が喪われて行った)

ん?
ああ、この仕事はそれなりに長くはやっているが。
ずっとではないな。昔、若い頃に一度転職しているよ。

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