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遥か夏のカプリチオ
挨拶が遅れてしまいました。これからよろしくお願いしますね。
僕は普段お金を賭けてやっていますが、
血液とか魂を賭けたりもするんですね…知りませんでした。
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日が沈んでなお、通りに人の波は途切れず、並ぶ店のすべてが灯を掲げている。
毎夜毎夜に繰り広げられる宴。
男も女も浴びるほどに酒を飲み。
余興とばかりに交されるカードの応酬で信じられないがくの金が動く。
ここで生み出されるものはない。
誰も彼もが只々欲望のままに誰かを何かを貪っている。
愛が生まれたと叫んだものが居る。
しかしそれも、きっと一晩ばかりの泡沫なのだ。
人を金を飲み込む巨大なる怪物、歓楽街。
綺羅びやかなる退廃だけがここにある。
「コール」
喧騒鳴り止まぬ賭場の一角で、その場には似つかわしくないような。まだ幼いと言っても良いような声色でそう宣言する声が上がる。
そのテーブルに付いているものは二人。客とディーラーだ。
客は身なりこそ良いものの、俗な性根がその身振りからにじみ出るような野卑な男で、対するディーラーは長い耳をゆらゆら揺らす、兎の獣人であった。
「おいおい、良いのか?いま俺様が賭けたのは今日の最高額だ。口出すことじゃァないが、これで負けたらお前さん?この店続けてられねぇんじゃないか?」
「お気になさらず。この程度で傾く店じゃありませんよ」
兎ゆえに若く見える、否。彼は実際に若いのだろう。そんな相手を挑発してみれば、まるで飄然と返される。気を悪くしたように男は鼻を鳴らすが、気を取り直したように意地の悪い笑みを浮かべる。
「は!それじゃあオープンだ。後悔するなよ?」
「えぇ、どうぞお先に」
男が自分の手札をテーブルに投げ出し、それを見たギャラリーからどよめきが上がる。
カードはダイヤの9、10、J、Q、K。ストレートフラッシュ。ロイヤルとこそつかないものの、むしろそれが途方もなく低い確率でしか成立しないことを思えば最強に近い役であった。
「くくく、どうだ?今から降りるなんてできねぇぞ?」
「その必要はありませんよ」
ディーラーはその余裕を持った態度を崩すことなく、手札を公開する。
スペードの10、J、Q、K、A。ロイヤルストレートフラッシュ。
ギャラリーからは歓声が上がり、男は顔色を赤くしたり青くしたりと忙しない。
「い、イカサマだ!ろ、ロイヤルストレートフラッシュなんて早々出るはずが……!」
「では、証拠を出していただきたいものですね。あなたは見たんですか?私が、カードをすり替えたとでも?もし見たと言うなら、なぜその場で指摘しなかったのですか?」
「ぐ、ぐむ……!」
「それよりも……お客様のその袖口から覗いているカードについて、聞かせていただきたいのですが」
「んなっ!?」
慌てたように男は自分の服の袖を抑え、あまりにも焦りすぎたためか、逆にそこからカードを取りこぼしてしまう。
「い、いや、違う!これは……!」
「お話は」
気がつけば、男の背後に何者かが立っている。1秒前までは確実に何も居なかったと断言できるその場所に。男はまるで己の魂を徴収しに来た悪魔でも視るような目線で、それを視る。
「バックで聞かせていただきましょうか」
その日。その後の男の足取りを知るものは誰も居なかった。
そこは欲望渦巻く伏魔殿。小手先の技でだまくらかそうとしても、調子に乗れば必ず手痛いしっぺ返しを食らう。努々、油断なさらぬよう。
というわけで今回の入団者
『純粋なクロ』札切 九郎
さんでーす。
ディーラーさんですって。日々さぞやお互いの魂を量り売りするような勝負の世界に身をおいているんでしょうね。
血液を賭けたことある?
私は血とか通ってないんで。オールドワンなんで
まぁそんな感じ。
では、以後よろしく