ギルドスレッド スレッドの一部のみを抽出して表示しています。 遥か夏のカプリチオ 【入団報告】弾丸に口づけを 【歪んだ杓子定規】 フニクリ=フニクラ (p3p000270) [2020-03-16 05:44:49] スコープ越しの景色は冷たい。 廃ビルの屋上で一丁のライフルを抱きしめて寝転びながら、エレン・エスティアはそんなことを思った。 あるいは、腕の中のライフルの、金属の温度がそう連想させるのかもしれない。 頭に浮かんだ考えを、エレンは呆れたように小さく笑って振り払う。 感傷だ。自分にこんなナイーヴな感情が存在していることが意外ですらあった。ターゲットを待つ間の空虚な時間な時間が余計なことを考えさせる。 気を引き締めなければ。エレンは、自分の仕事を再確認する。何も知らずにおびき出されたターゲットの頭を、腕の中のライフルで吹き飛ばすだけの、いつもの仕事。 ターゲットが現れるまではまだ時間がある。早めに行動を起こすのが円満な仕事のコツだ。空いた時間で、すべき事の確認もできる。 エレンは一度身を起こすと、懐からターゲットについて書かれた資料を取り出す。プロフィールが簡易にまとめられた数枚の紙。その一番上にはターゲットの写真と名前が記されている。『お肉大好きミノタウ郎』 写真に写ったターゲットの姿は、なんか寸胴な胴体に胴とほぼ同じ大きさの頭が乗っかり、それらと比べるとどうにも頼りなく見える小さい手足が生えた、一言で言えば牛のような生き物のキグルミといった存在であった。 エレンは思う。 いやねーわ。 見間違いであることを期待して、いま確認したけれど何度見てもふざけた名前のふざけた存在が今回の仕事のターゲットである。 からかわれたのかとも思ったが依頼人は至って真剣な様子でこの仕事を持ちかけてきた。 エレンがこの仕事をしてきた中でも一等シリアスな雰囲気での依頼だったので話の途中で確認できなかった。 墓石のような目をして「こいつを消してもらいたい」って言ういかつい男にお肉大好きミノタウ郎って言う勇気はエレンにはなかった。 そんな事するくらいならお肉大好きミノタウ郎が見間違いだったことに賭けたほうが勝算があった。今負けたが。 エレンは自分の中にあるやる気という感情がガリガリ削れていくのを自覚しながらも、しかし仕事人としてのプライドでもって資料に目を通す。悪い夢でも見ているような状況であるが、一度受けた仕事をないがしろにするつもりはない。 一番上のページをめくる。この写真と名前は脳に悪い。次のページの一番上に太字で書かれた文字が目に入る。『好物は野菜』 お肉大好きじゃねーのか。 そもそもターゲットの食事の嗜好をこういう資料に書く?普通。これ知ってどうなるというのか。 「お、じゃあ毒野菜サラダで暗殺しちゃうぞゾ」とはならない。自分の獲物はライフルだ。そういう事させたいなら暗殺料理人に頼むべきだろう。暗殺料理人なんてものが存在するのかは知らないが。 やる気がガリガリ。それでもめげずに資料を読みすすめる。『最近は肉は油が多くてあんまり食べられない』 お肉大好きじゃねーのかよ。 アイデンティティを否定してきた。名前にお肉大好きって付いてるのに肉食えねぇのかよ。そもそもお肉大好きが名前ってなんだよ。この感情をどうしたら良いんだよ。 エレンのやる気は底をつきそう。資料を真面目に読むきも失せたので、『蹄が2つに割れている』『体重はサーロインステーキ30枚分』なんかのやる気に致命傷を浴びせてきそうな文を目に入れないようにしつつぱらぱらと流し見る。と、あっという間に最後のページまでたどり着く。 ほとんどそう言うことしか書いてねぇぞこの資料。 ともあれ、そのページには赤字で『特記事項』と記されていた。こういうのでいいんだよこう言うので。まともな資料っぽい記述に少しやる気を取り戻しながら、エレンはその先に書かれた文を読む。『お肉大好きミノタウ郎はキグルミである』 見りゃあわかるわぁ。 その十数分後。何らかの怒りが込められた銃弾がお肉大好きミノタウ郎の頭を吹き飛ばしたことが第三次サーロイン=ミネストローネ紛争の引き金となるのだが、それはまた別のお話。というわけで今回の入団者。『特異運命座標』エレン・エスティア さんでーす。スナイパーですって。かっこいいよね、スナイパー。好きな銃器は?って聞かれたらスナイパーライフルって答えますよ。私は。みんなもそうでしょ?そうでもない?はははいとおかし。まぁスナイパーライフルとスナイパーじゃないライフルってどう違うのかよく分かってないんですけどね。なんか長いよね。打撃武器としても優秀そう。すぱーんってねぇ。すぱーんって。はい。まぁそんな感じです。では以後よろしく。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
廃ビルの屋上で一丁のライフルを抱きしめて寝転びながら、エレン・エスティアはそんなことを思った。
あるいは、腕の中のライフルの、金属の温度がそう連想させるのかもしれない。
頭に浮かんだ考えを、エレンは呆れたように小さく笑って振り払う。
感傷だ。自分にこんなナイーヴな感情が存在していることが意外ですらあった。ターゲットを待つ間の空虚な時間な時間が余計なことを考えさせる。
気を引き締めなければ。エレンは、自分の仕事を再確認する。何も知らずにおびき出されたターゲットの頭を、腕の中のライフルで吹き飛ばすだけの、いつもの仕事。
ターゲットが現れるまではまだ時間がある。早めに行動を起こすのが円満な仕事のコツだ。空いた時間で、すべき事の確認もできる。
エレンは一度身を起こすと、懐からターゲットについて書かれた資料を取り出す。プロフィールが簡易にまとめられた数枚の紙。その一番上にはターゲットの写真と名前が記されている。
『お肉大好きミノタウ郎』
写真に写ったターゲットの姿は、なんか寸胴な胴体に胴とほぼ同じ大きさの頭が乗っかり、それらと比べるとどうにも頼りなく見える小さい手足が生えた、一言で言えば牛のような生き物のキグルミといった存在であった。
エレンは思う。
いやねーわ。
見間違いであることを期待して、いま確認したけれど何度見てもふざけた名前のふざけた存在が今回の仕事のターゲットである。
からかわれたのかとも思ったが依頼人は至って真剣な様子でこの仕事を持ちかけてきた。
エレンがこの仕事をしてきた中でも一等シリアスな雰囲気での依頼だったので話の途中で確認できなかった。
墓石のような目をして「こいつを消してもらいたい」って言ういかつい男にお肉大好きミノタウ郎って言う勇気はエレンにはなかった。
そんな事するくらいならお肉大好きミノタウ郎が見間違いだったことに賭けたほうが勝算があった。今負けたが。
エレンは自分の中にあるやる気という感情がガリガリ削れていくのを自覚しながらも、しかし仕事人としてのプライドでもって資料に目を通す。悪い夢でも見ているような状況であるが、一度受けた仕事をないがしろにするつもりはない。
一番上のページをめくる。この写真と名前は脳に悪い。次のページの一番上に太字で書かれた文字が目に入る。
『好物は野菜』
お肉大好きじゃねーのか。
そもそもターゲットの食事の嗜好をこういう資料に書く?普通。これ知ってどうなるというのか。
「お、じゃあ毒野菜サラダで暗殺しちゃうぞゾ」とはならない。自分の獲物はライフルだ。そういう事させたいなら暗殺料理人に頼むべきだろう。暗殺料理人なんてものが存在するのかは知らないが。
やる気がガリガリ。それでもめげずに資料を読みすすめる。
『最近は肉は油が多くてあんまり食べられない』
お肉大好きじゃねーのかよ。
アイデンティティを否定してきた。名前にお肉大好きって付いてるのに肉食えねぇのかよ。そもそもお肉大好きが名前ってなんだよ。この感情をどうしたら良いんだよ。
エレンのやる気は底をつきそう。資料を真面目に読むきも失せたので、『蹄が2つに割れている』『体重はサーロインステーキ30枚分』なんかのやる気に致命傷を浴びせてきそうな文を目に入れないようにしつつぱらぱらと流し見る。と、あっという間に最後のページまでたどり着く。
ほとんどそう言うことしか書いてねぇぞこの資料。
ともあれ、そのページには赤字で『特記事項』と記されていた。こういうのでいいんだよこう言うので。まともな資料っぽい記述に少しやる気を取り戻しながら、エレンはその先に書かれた文を読む。
『お肉大好きミノタウ郎はキグルミである』
見りゃあわかるわぁ。
その十数分後。何らかの怒りが込められた銃弾がお肉大好きミノタウ郎の頭を吹き飛ばしたことが第三次サーロイン=ミネストローネ紛争の引き金となるのだが、それはまた別のお話。
というわけで今回の入団者。
『特異運命座標』エレン・エスティア
さんでーす。
スナイパーですって。かっこいいよね、スナイパー。好きな銃器は?って聞かれたらスナイパーライフルって答えますよ。私は。みんなもそうでしょ?そうでもない?はははいとおかし。
まぁスナイパーライフルとスナイパーじゃないライフルってどう違うのかよく分かってないんですけどね。なんか長いよね。打撃武器としても優秀そう。すぱーんってねぇ。すぱーんって。
はい。
まぁそんな感じです。
では以後よろしく。