ギルド・ローレットから暫く歩いた場所にある仕立屋。
店内の広さはおおよそ15メートル四方ほどだろうか。
内装は派手な色遣いは抑えられ、並べられた衣服と併せて落ち着いた雰囲気を作り出している。

店の奥へ繋がる扉の前に置かれたカウンターから、
店員らしき女性が笑顔で声を掛ける。

「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょうか？」

ああ、そういえば翼の生えた人はいくらか見たな。
彼ら向けのものは出回っているようだし、そのあたりは選択肢として考慮するに値するかもしれない。
……しかしそういうことなら、この店のことは憶えておかせてもらうよ。
なんといっても質がよさそうだし、私の趣味にも合いそうだ。

ところで、先程の言い方からすると君は旅人ではなくこの世界の出身かね？
私と同じ旅人でも召喚されてきたのがだいぶ前という人もいるようだし、彼らは既にこちらで生業を得ていてもおかしくはない。
だから、君が旅人かそうでないかというのは来たばかりの私には判断しかねるのだが……。