PandoraPartyProject

ギルドスレッド

潮騒の従者斡旋所

手負いの鮫

「焼き魚になるところでした」

包帯よりも白い、歯を見せて笑った。

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……うーん。安静に、と。
窓から見る景色のなんと退屈なことでしょう。

そして、
開け放たれた窓から顔を出す、あの見覚えのある獣は一体。
(他方。扉の方からは、こんこんと、小さなノックの音。)
レモラ、レモラ。いるかしら。
わたし、「お見舞い」に来たわ。怪我は、大丈夫?
(扉の向こう……やや下方からするであろうその小さな誰かさんの声を聞き分けるのは、難しいことではないでしょう。)
(軽い鳴き声と共に、窓枠を跳んだそれは膝から身体へと衝撃をもたらして)
うっ。我が物顔でベッドに乗ってくるんじゃありません。
何ですかその咥えた干物は。
未来の私の姿とでも……
(低い場所から鳴らされたノックの音)
(一瞬、さっさと寛ぎ始める眼前の仲間を疑うも、続く声ですぐに答えへと到達して)

まあ、姫さま。
恐縮ですわ、どうぞお入りくださいな。
お邪魔するわね、レモラ。具合はどうかしら……。

(もはや自分の手の届かぬ高さにあるノブをひねる手段もたくさん覚えました。扉を開いて、とことこ部屋へ歩み行ってゆきます。)
(……と。やがて足を止めて、小さな瞳をぱちくり、ぱちくり。)
(どうやら従者をお見舞いに来ていた「お客さん」は、一人だけではなかったようでした。)

…………。そちらの猫は、お友達?
ええ、退屈を覚える程度には具合は上々で。
(患者衣を正し、さりげなく包帯を隠すように)

ああ、これは……侵入者ですね。
お友達ではございませんのでご心配なく。
(腿の上から持ち上げようと、その両腕の下に手を差し入れて)
お友達……ではないの? きっと、お酒を飲んだときに聞こえたのも、その子の声よね。
(Remoraの家にいる猫なのだから、と記憶の糸を結びつけるのでした。)

けれど、無事だったならよかった。
……レモラがあそこで炎を受け止めてくれていなかったら、今ベッドに横たわっていたのは、わたしだったかもしれないのだもの。
(きりきり。記憶の歯車を軋ませ、思い返すのは、爆煙が戦士たちの身を焦がす苛烈な戦場)
(誰か一人でも欠けていたなら勝算も狂っていたであろう、はじめての「決戦」。)
お見舞い、というのに来たのは初めてだけれど。
わたしに、何か手伝えることはあるかしら。
(そのまま持ち上げれば抗議というよりも、それは喜びに似た声をあげて)
おや、あの時にそんな声が聞こえましたか? はてさて、記憶にございませんけれど……
お酒も入っておりましたもの、そういうこともあるかもしれませんね。

ふふ、見た目通りにか弱いのですけれど、今回は当たりどころが良かったようで。
姫さまより私の方が大きいですからね。それぐらいは、従者のお役目ですわ。
(いつものように歯を見せて笑えば、揺れた肩から患者衣がまたずれて)
(打算抜きに、眼前へ躍り出た記憶は瞼の裏に浮かび上がって)

まあ、そうなのですね。
何かできること……とあればそうですね。
(ふーむ、と唸ればニャアと応えて)
……しばし、この子の相手をしていただいても?
そうだったかしら。でもやっぱり、レモラは猫に好かれているのね?
(愛嬌あふれる鳴き声を「かわいらしい」と思う程度の感性は、お姫様にも身につきつつありました。)

それなら、尽くしてくれた従者を労うのがわたしの役目ね。
……せめてわたしに、治療の心得があればよかったのだけれど……。
(この小さなからだで、何をしてあげられるだろう。ささやかだけど深刻な懊悩に、きりきり、歯車を軋ませていたところ。)
……こちらの猫さんの、お相手?
(懐こい様子の猫を、ぱちくり、宝石の瞳が見つめました)
(物語で読んだ「お見舞い」は、献身的で慈愛に満ちた言葉の応酬が繰り広げられていましたから、ちょっぴりの拍子抜けもあります。)
ええ、ええ。そのぐらいのことでよければ、もちろん。
……ところで、その猫さん、お名前は?
好かれているのですかねえ。
例え好かれているにしても、どこか食材として好かれている気がしてならぬのです。
(タオルケットの上に残された干物を半眼で見つめながら)

まあ、お見舞いに治療の心得など不要ですわ。
もちろん、あって困るものでもございませんけれど、
お見舞いとして訪ねていただいただけで、私の体調は大分良い方向に向かっているのです。
目に見える傷の治療のみが、介抱ではありませんよ。
(背筋を伸ばそうと姿勢を正せば、自然と持ち上げた猫も伸びて)
名前。
(虚を突かれたように、一拍。伸びた猫を解放すれば、頬に手を当てて)

……やはり名前は必要でしょうか。
呼ばなくてもついて回るもので、私からこの子を呼んだことがないもので。
そうなのかしら。でもレモラが言うなら、きっとそうなのね。
わたしの訪問が少しでもレモラの活力になったなら、わたしも嬉しいわ。
(微笑みを添え、スカートをつまんで優雅に一礼。ぎこちなかった動作も、ずいぶん様になってきました。)

ええ、ええ。きっとつけた方がいいわ。
おじいさんのお店で人形を買ってゆくひと達だって
店先でお人形の名前を考えているのなんて、珍しくなかったもの。
(この子はアンジェラかしら。ああ、カトリーヌでもいいわね。……なあんて、夢見がちな笑顔でお人形とにらめっこする小さな女の子の姿が、思い出されました。)

……それにしても、猫ってずいぶん伸びるのね。
(猫を持ち上げる。自分にはできない動作ですから、「伸びる猫」という概念の目撃はこれが初めてです。)
ふうむ、絵になる。
(などと軽口を叩く余裕も復活しているようで)

お人形と猫、似てるようで異なるような。
愛玩の対象とするのならば、おっしゃる通りです。
私の場合は、私の意図と関係なく、この「黒いの」にまとわりつかれているもので。
ひとまず……今日のところはお好きなように呼んでいただければ。
(適当な呼称にも、またニャアと)

おや。そういえばそうですね。
我々とはつくりが違うようです。
褒めて伸ばすという言葉もありますが、
伸びるものは勝手に伸びるのですねえ。
まあ……「クロイノ」という名前をつけたのね?
(いささかばかり、やはり常識のピントがずれてしまっている部分はあるもので)
(Remoraの口にした呼び名を、お姫様は額面通りに受け取ってしまったのでした。お好きなようにというのはつまり、その上で何か愛称をつければよいのだと。)
……そうね。少し個性的だけど、凛々しい響きだと思うし。
わたしも「クロイノ」と呼ばせていただくわ。ねえ、ご機嫌麗しゅう、クロイノ。
(伸びる猫の「名前」の真意も知らず、天真爛漫に改めての挨拶をするのでした)

わたしもたまに抱っこはしてもらうけれど、こんな風に伸びることはできないわ。
……わたしでは伸ばしてあげることができなくて、残念だけれど。
(なにしろ体格が体格。抱き上げるなど、土台無理な話でございました。)
いえ、名付けたわけでは。
ただ黒いので黒いのと……
(その先はまたニャアニャアとかき消されて)

(姫様にそう呼ばれて嬉しそうに鳴く姿に、警戒心というものは全く存在しないようで)
得手不得手がございますもの。
姫様が伸びなくとも、伸ばせずとも、そこな獣が代わりに伸びましょう。
適材適所というやつです。

そうそう。そうやって、並んで視線を合わせられるのは……姫さまならでは、かもしれませんね。
まあ……そうだったの。
けれど、それならば、ええ。余計に名前が必要よ。
猫、黒いの、では職能や称号程度のもの。
隣人の呼び名としては、ふさわしくないわ?
(猫に対する評価は、なにやらとても親しげなものとなっていたようです。)

では、ええ。伸びるのはこの子に任せて。
……同じ目線でものが見られるなら。
この子の目線で、名前を考えてあげることもできるかしら?
(そして、いささかばかり、珍妙な発想にも至ったようでした。)
隣人……居候の方が適した表現なのですけれど。
ふさわしい名前となれば、何かしらの意味を与えるべきでしょうか。
黒いからクロ、伸びるからノビと言ったような。

まあ、姫様にお名前を考えていただけるなら幸いです。
私といえば、全く安直なものしか浮かばないもので。
洒落た響きのひとつでも思いつけばいいのですけれど……クロ……クロノ……?
クロノ?
……クロノ、クロノ。
ええ、ええ。この子の名前として、とっても素敵な響きをしていると思うわ。
ふふ。従者の提言を聞き入れて、決と布告とを行うのもお姫様の役目よね?
(にこりと相貌を崩したお姫様は、どうやらほとんど決心を固めているようで)

この子の名前は、クロノ。ねえ、レモラ。それでいいかしら?
姫様がご決断なさったことに、私は異論なく。
姫様がクロノとお呼びになるならば、私もクロノと呼びましょう。
(耳ヒレをたたみ、かしづくように)

……居候のくせに名前までいただけるなんて、お前は幸せ者ですね。
まったく、布告の元に幸せな臣下が増えたようですわ。
(当の臣下は、クロノと呼ばれるたびにキョロキョロと頭を動かして)
ふふ、おかげさまで良い療養になった心地で。

もうしばらく休暇をいただいても良いかと思ったのですけれど、
やはりすぐにでも従者稼業に戻らねば、お肌が乾いてしまいますわ。

(暫く微笑みを携えたまま、ふと柔らかい表情を見せて)
……姫様、ありがとうございます。
私はもう大丈夫ですので。
次は、遅れをとることがないように致します。
よかったわ。
それじゃあ、あなたの名前はクロノ。
……ふふ。ここに来るのに、レモラ以外にも、会うのが楽しみなひとが増えてしまったわね?
(ひと、ではないのですけれど。なにしろお姫様自身、お人形なものですから。)

ええ。けれども、あれは「遅れ」などではないわ。
レモラは従者として、あの場において、できる限りのことを尽くしたのだもの。
だからこそわたしは、最後に、一撃を加える機が生まれた。

――ありがとう、レモラ。
わたし、あなたが従者であることを、誇りに思うわ。
それじゃあ、ええ。
わたしも、今日はひとまずおいとまするわね?
(スカートをつまんで、優雅な一礼を、「ふたり」への別れの挨拶としました。)
誇りだなどと、私には勿体ない……いえ、まったく相応のお言葉で。
ええ、相応であるようにお応えしましょう。

ええ、ごきげんよう姫様。
クロノ共々、次回は玄関にて見送りをさせていただきますわ。
(クロノの前脚をつかむと、二人の従者は手を振って主人を見送りました)

……こうして抱えると、重いですね、猫め。

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