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ギルドスレッド

潮騒の従者斡旋所

面接記録(1)

テーブルと椅子。

息が届くぐらいに近い距離。

向き合うように、二人。

(従者をお求めならば、何方でもご自由に)

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それで、何処までお話ししましたか。
私の名前は……発音が難しければレモラで結構です。
簡単でしょう?
もし此処で躓かれるようならば、これ以上のお話は無意味だとも思うのですけれども。

ええ、主従関係に重要なのは信頼です。
この人であれば間違いない、というような。
ですから返すように、
望まれるなら私は貴方を唱えましょう。

さあ、聞かせてくださいますか?
「候補者」様の御名前を。
主従関係に必要なのは信頼。うむ、全くその通りであるな。
(対面に座していた少年は、女性の言葉に噛み締める様に大きく一つ頷いた)

それではレモラと。
そしてお主が名乗ったからには次は僕の番であるな。
輝かしい我が名をその鼓膜にしかと刻みつけるがよい!
僕こそはレオナルド=アポロニカ=ヴァルキュールである!

本当のところ、もっと長いのだが噛んでしまうので割愛する!
身分は違う身なれど、そう畏まらず気安くレオナルド様もしくは王子殿下と呼ぶことを許そうではないか!
成程、教えて頂いただけでも十分に長いお名前で。
噛むようなお名前は私もご遠慮頂きたいので助かります。

では、レオナルド様は何処かの王子であらせられるのですか。
さぞかし優雅な生活を送られていると思われるのですが……
既に優秀なお付きの方がいらっしゃるのではありませんか?

勿論、私の方が優秀だと思いますが。
うむ、良い質問である。とても良い質問である!
如何にもこの僕こそがかのヴァルキュール王国の王子である!
とは言っても異世界のこと故、聞いたこともないであろうが。

と、従者の話であったな。
うむ、お主の言う通り既に僕には爺やが付いておる。
どちらが優秀であるかはまだ何とも言えぬが、より優秀な者を一人だけよりも二人召し抱えた方が色々と都合が良いのでな。
人手はいくらあっても困らぬ故。
異世界のご出身でしたか。
道理で。

ああいえ、その、爺やという方も同じ異邦から来訪された方でしょうか。
お話を伺う限り、その方以外に現状従者はいらっしゃらないと。
対立候補が少ないに越したことはありませんが……
失礼、少々イメージと異なっておりまして。

人手に関しては同意見ですよ。
私個人の負担も減りますから。
うむ、爺やも僕と同じく異世界から呼び出された身である。
二人同時にこちらに呼ばれたのは不幸中の幸いと言えよう。
そもそも二人だけで呼ばれてる時点で大分不都合極まりないがそこはそれ、物事は前向きに考えるべきであるからな!

という訳で恥ずかしながら一文無しの身の上故、事業を始めようと思案しておったところここの募集が目に留まってな。
渡りに舟とはこの事であるな!
確かに、仰る通り不幸中の幸いでしたね。
此処にいらっしゃるまでさぞかしご苦労なされたことでしょう。
心中お察し致します。


さて。
それはそれとして。

今、「文無し」と仰いましたかレオナルド様。
私の数多い自慢であるところの1つにこの耳があるのですけれど、
何故だか一瞬遠くなってしまったようで。

渡りに船が見えたとしても、接岸しないことも現実はままあるのですけれど。
む、僕の言葉を聞き逃すとは中々の無作法であるな。
だがまぁよい。僕は寛大であるからな、その程度笑って許そうではないか。

しかしそうであるな。
「文無し」というのは些か誇張した表現ではある。
具体的に言うと、何とか食い繋ぐ事は出来ているがかなり厳しい状態に置かれている程度の経済状況。といったところであるな。

しかし原因不明の難聴であるか。
もしも頻繁に起こるようであるのならば医者に診せる事を強く奨めるぞ!
あ?

失礼、空気の通りが悪いようで。
寛大なお言葉、恐れ入ります。
可能なら早速暇を頂いて医者に向かいたいですね。

レオナルド様、文無しが比喩表現であるのは理解しましたが、
果たして信頼の証はご準備いただけるのでしょうか?
信頼も、誠意も、最終的に全ては等しく1つの形をとるものです。
世界が異なれど、その尺度は収束されるものでしょう。

ご存知でしょう?
私の知りうる形であれば、それはお金です。
むう、やはり金銭の話に行き着くのだな……。
しかしそれも当然の道理。
世の中金銭が全てではないが、全てに金銭は必要。
誠意があるのならば金くらい出し惜しみする筈がない、そういう訳であるな。

しかし安心するが良い!
僕は報酬を出し惜しみする等という愚は犯さぬ!
そう、ただ出し惜しむ以前に手元にないだけで!
無い袖は振れぬと言うしな!

そもそもに置いて僕に隷属し僕に奉仕する事こそが最大の報酬にして栄誉であると言っても過言ではあるまい。
今なら従者が無料! 急げ!
姉上も「人はありがとうを食べるだけで生きていける」と言っていたしな!
まあ、その姉上は後で陛下にこってりと絞られておったが……。
「ありがとう」の言葉のみで生きていけるのは天義に盲……
そう、心根が純粋に過ぎる方々のみでしょう。
彼等は余りに、命が寄りかかる場所を知らな過ぎる。

いいですかレオナルド様。
私達が生命足り得るのは欲があり、それを満たすべく行動するからです。
そうでなければただ風にそよぐ草木と一緒です。
ああそうですね、栄誉を糧に春になれば花を咲かすのも良いでしょう。
ですが、私は海種だ。

思考する能力を手に入れてしまった以上、私は自分が思考する通りに生きます。
奉仕とか我慢なんて願い下げです。
ああ全く回りくどくなりましたがね、

寝言は寝てから仰ってください。
いえ、どうぞご自宅で十分にご休養くださいさようなら。
フハハハハ、何たる無礼!
気に入った、真っ先に殺してやろう!
爺や、この者を即刻手打ちに致せ!
(そう言って手を叩くが、爺やなる者は現れず)

…………しまった、爺やは昨晩のカエルにあたって寝込んでいるのだった。
まあ爺やの事は置いておいて話を戻そう。
ありがとう云々に関しては冗談である故、安心するが良い。
ロイヤルジョークというやつである。
笑って良いぞ!

しかし手元に金が無いのは冗談ではない。
うむ、ロイヤルではない!
しかしである!
僕の計画が上手くいけば将来的に多大なる収入を見込めるのは自明の理!
ちょっと言葉の使い方が違う気もするが、そこはどうでもよい!
つまり、今のうちに協力しておけば近い将来ウッハウハのガッポガポという訳だ!

僕が祖国に帰還を果たした暁には城仕えも約束しよう!
どうだ、悪くない話であろう!!
早速お話の中で現状の人手がゼロになってますけれど。
爺や様の為に早くお帰りになった方が良いのでは?
ええ、早く、疾く。
体調が優れぬ時は誰しも人恋しくなるもので……聞いてませんね。

ロイヤルジョークと言いますが、
此方としても冗談ではありません。
自明と自滅は一文字違いでありますが、その取り違いは致命が過ぎる。
どうせろくな……コホン。おそらく労苦の程が慮らるる計画だと思うのですが、
それは私が聞き終わらないとお帰りになってくださらない類のものでしょうか?

因みに私にとって城勤めとは堅苦しそうなので悪い話です。
むう、堅苦しいのは嫌とは言うが奉公先を探してるのにそれは少し如何なものか……。

そうかそうか、そんなに僕の壮大な計画が聞きたいか!
よかろう、ならば心して聞くが良い!
……と思ったが、そろそろ日も暮れるのでまたの機会にするとしよう。
フフフ、焦らして興味をそそるとは何たる策士。己の頭脳が恐ろしい……!

という訳で帰る。
ディナーの時間までに帰らぬと爺やが僕の分も平らげてしまう、もとい心配するからな。
うむ、良い暇潰しになった。
また遊びに来る故、次回はお茶なんぞを用意しておく事を奨める!
ではな、レモラ!
また来るぞ!!
(そう不穏な宣言だけを残し、少年は大きく手を振ってバタバタと慌ただしくその場を後にした)
ええ、奉公とは違いますね。
私は、常に従者ではありませんから。
主人に従うのは支払われる報酬の範囲のみです。
それが終われば一つの知的生命体として自由を主張いたします。

自由を主張したからこそ、今私は貴族の邸宅ではなく此処にいるわけですがね。
庇護と報酬と、ろくに支払いを確約しない者程制約が厳しいもので。
金持ちほどケチというのは存外真実やもしれませんが……

お帰りですか。
ようやく。

ええ、ええ。
次回いらっしゃる際は岩塩をご用意しておきますね。
撒くだけではなくぶつけることができる優れものですので。

御機嫌ようレオナルド様。
カエルが胃の中で健闘されますように。
(椅子に座ったまま、お辞儀ではなく会釈で見送れば)

……顔に騙されたな。

(何度目だ、と彼女は呟いた)


(続)

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