PandoraPartyProject

ギルドスレッド

商人ギルド・サヨナキドリ

無垢なる悪魔

ーー終わりは、欲しい?

ソレは問うた。

ーーいらないです。

嘆きと憎悪の中から掬い上げられた憐れな魂は答えた。

かくして「人間らしい」終焉が、今ここに破却されようとしていた。

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(ソレは、椅子に座って歌っていた。歌詞は無く、音程も無いように聴こえるウタ。遥か昔、白き青海の主がソレを慰めるために歌って聴かせたものだ)
……。(ほかの部屋で作業をしていたが、ふと何処からか歌が聞こえた気がしてふらふらと歩き出す。導かれた部屋の前で聞き入り)
嗚呼……ご主人様はやっぱり、不思議な方だなぁ。
(化け物ばかりのキャラハン家。それとは比較にならないほど規格外の強さを持ちながら、それでいて惹きつけられる。

コンコン、と軽く扉を叩いて)
ご主人様……、お呼びでしょうか?
(ウタを歌うのを止めて、扉へ視線を向ける)

おいで、フォルネウス。
はい、失礼いたします。
(扉を開けて中に入ると、後ろ手に閉めつつ)
何度聞いても安らぐ歌ですね。……あっ、勝手に聞いててすみません!でも、つい惹かれてしまって……!
(くすくす笑ってフォルネウスを手招く)聴くくらい、どうということもないさ。海にまつわるモノであればこのウタに惹かれるのも頷ける。このウタは海にかえるウタだからね。麗しき、白鯨の君のウタさ。
海にかえるウタ……。
この身体になってからは水も泳げはすれど潜れないから、無意識のうちに帰ろうとしているのかもしれません。
白鯨の君がどんな方なのか、気になります。
(招かれればホッと息をついて近づき、目の前で片膝をつこう)
白鯨の君はーー我(アタシ)のトモダチ。少しのんびり屋で、優しくて、賢くて、美しい青海の主。世界の在り方を教えてくれて、時々我(アタシ)に魚をご馳走してくれて。色々あって、空を飛んだこともあったんだよ。

(いつもは本質のみを視て語る三日月のような笑顔は、片膝をつく男に白鯨の君を語るその時ばかりはまるで無邪気な少女のようですらあった)
いい友達だったんですね。だって、話を聞いているだけでとっても心が温かくなりますから!
私もご主人様をいっぱい幸せにできるように、頑張らないとなぁ。
幸せ?我(アタシ)を?(きょとんとしながら)ーー降って湧いた余生なのだから、自分の為だけに使えばよいのに。
ご主人様の幸せは私の幸せです。
(へにゃりと緩んだ笑みを浮かべて)
というか、分からないのもあるんですよね……。いきなり得た自由をどんな風に使ったらいいかなんて。
ふぅん……時々思うけど、キミたちって不便な考え方をするよねぇ。まるで、自由に方向性や目的が無いといけないみたいだ。
だって、自由は怖いものですよ?好きなようにやったら誰かが傷ついてしまうかもしれませんし……。誰かを傷つけるくらいなら、そっと部屋のすみっこで過ごした方がマシです。
自由が怖いのではないよ、フォルネウス。傷付けたと思わないことこそが醜悪な怪物を生む。そして一方で、臆病に支配されることはいずれ不和を生む。面白いものだね。キミは臆病を利用する事を覚えた方がいい。時としてたいそう面白い信念(エゴ)が生まれるからね。
嗚呼、確かにそうです。私は臆病風に吹かれて命を散らせました。
党首の儀式において、望まない型で生き残ってしまった。そんな男が家を守れる筈もなくーー
だからルベライトのような者が生まれてしまった。彼は私の罪そのものです。
なんだい、懺悔かフォルネウス?
(くすくす…と見下ろす目が愉しそうに歪む)
えぇ。罪が消える事はありませんが、
告白して決別する事はできると思いまして。
(へにゃ、と頰を緩めて柔らかく笑う)
少しでも現実を見ていかなきゃ。
我(アタシ)はカミサマみたいに赦しを与えられるような上等なモンじゃあないのだけどね。ーーそれで、現実を見て結局どうするんだぃ。人並みに暮らしたいと願うなら、寿命を与えて、家と資金与えて、我(アタシ)の楔から解放するけれど。(くすくす)
カミサマですよ。私にとっては、ご主人様が全てです。貴方の側から離れるなんて、とんでもない。それにーー
(胸に手を置き、考えるように目を伏せる。憂いを帯びた瞳を揺らし)
やるべき事も新たに増えました。
先日のローレットの依頼で敵対したチェネレントラ。彼女に眠りを与えなければいけません。
ああ、キミは先の決戦で団長の部下達の相手をしていたね、そういえば。

アレはなかなかに愉快で興味深い出来事だった。ハラワタを抉られるくらいの駄賃を払っても惜しくないくらいだったね。ヒヒヒヒヒ……。
(民族衣装じみたコートをめくると、その下の衣服の腹部に赤い染みが滲んでいる。赤い染みは少し時間が経つと黒い塵となって空中へ溶けるが、そこからまた新しい赤が滲み出していた)
はい。十三さんという方に誘われて。
私のような弱いものでも数が欲しい、と。


……ッ!?
(武器商人のけがを間近で見て絶句する)あぁ、なんて酷い!許せません……魔種の者達……!
そう?こっちはこっちで滅ぼしに行ってるし、放っておけば治る怪我だし気にせずともいいよ?(首をことりと傾げ)……ああ、話が逸れそうだ。そう、そうだ。やりたいことがあってーーキミが終わりを拒むなら。我(アタシ)はキミの望みを叶えよう。ただ、終わりの拒絶は絶対では無いし、決してまともな終わりは訪れない。

フォルネウス。名を奪われた者。或いは与えられし者。

ーーキミの望みは、なぁに?
気にしますよ、そんなの!だって痛そうじゃないですか。
……。(ごくり、唾を飲み込む。
一度は失った生。諦めて身を浸していた死。
その楔から解き放たれる事は、きっといい事ばかりではない。
視線を彷徨わせた後、意を決したように相手を見つめ直し)
ご主人様。僕の望みは刹那でも、ほんの一瞬でもいい。与えてくださった貴方に報いる事です。
それが摂理に反する事でも、私は貴方様におつかえしたい。

なんて……かっこよく言いましたが、単純な話なんです。好きな人を笑顔にしつづけていたい。私の望みはそれだけだ。
(ふ、と笑みなのかため息なのか判別のつかぬ息をひとつ)
単純で純粋な願いほど、困難で強固な願いだとも。我(アタシ)は好きだよ、そういうの。

(前髪を寄せ、瞳を覗き込むように相手の頰に手を添えようと)
ご主人様……!(ぱぁと表情が明るくなり、ハの字に寄りがちな眉間の皺が緩む。
ほんのりと照れて頬を染めつつ、触れられると緊張してその場で動かなくなったり)
"満ちよ、満ちよ、銀の海。閉じよ、閉じよ、八方への道。リンデンバウムの鐘よ鳴れ。私の栄華はあなたと共に。あなたの命運は私と共に。あなたは私の手、あなたは私の足、あなたは私の十八の界。一切を捧げ、合切を希え。誓いをここに――"(言の葉を促すように、そっと下唇を親指の腹でなぞり)
……っ。(緊張で乾いた喉を潤すように、ごくりと唾をのむ。謳のように紡がれた言葉に耳を傾けて、唇に感じる指の温かさに促されるように口を開いた)
クロサイト= F=キャラハン。真名フォルネウス。一切を捧げ、健やかなる時も病める時も、お側にいると誓います。
"かくて、誓いの言葉を以て七度の結びとせん"(詠唱が終わると共に、地面に複雑な文様が描かれそこから銀の鎖が幾本も伸びる。ソレとの契約に応じたモノは、ソレの長い長い物語に触れることだろう)
……ん?へっ?あれっ?
うわっ、な、ななななっ、何ですかーー!?(マイペースで一瞬なにが起こったか分からなかった。伸びてきた鎖にされるがままになりつつ情けない声をあげ)
(やがて鎖は砕けるように消えて)……はい、終わり。少し情報は多いが、なに、すぐ慣れるさ。
なんだろう。凄く体が……ゾクゾクして……(思わず身震いした。鎖が砕けると、音でハッと我に返り)じゃっ、じゃあ今日から私もご主人様と同じ……?
そのとおり。キミは我(アタシ)の手、我(アタシ)の足、我(アタシ)の十八界。(胸元を指差して)ーー正真正銘、キミは我(アタシ)のモノで我(アタシ)の一部だ。
……!(ぱあぁっと周りの空気まで明るくなるような笑顔を見せる。深々と頭を下げて)
恐縮、です……。
(少し泣きそうだった。すん、と鼻をすする)
ご主人様の一部として、名に恥じぬよう努力していきますね。
大袈裟だなァ。恥じる名も無いような身さ、我(アタシ)は。ヒヒッ。
そうでしょうか。ご主人様は眩しいくらい素敵な方です。
まわりにお慕いしてる方もいっぱいいらっしゃいますし……。
そして怖れるモノも多い。ついでに怖れられる原因も一応、心当たりがある。(くすくす)
恐れられる原因……やはり……(ごくり。緊張で唾をのみ込む。その言葉を口に出す事自体が震えが走るといわんばかりに怯えの混じった顔だ。)
だ、っ…………大根……ですか……?
……。アレ、我(アタシ)だけのせいじゃないもん。(拗ねた声で)
ご主人様、可愛いです……!
?そうだったんですか。てっきりご主人様が作った珍アイテムのうちのひとつかと
我(アタシ)以外も噛んでるよ。色んなところから魔術師を集めたんだもの。
色んなところから集まった魔術師の、大根……。

(ドンドコドンドコ、太鼓をたたく音が響き渡る。
謎の文明の怪しい祭壇を取り囲み、呪文を唱えるローブの魔術師たち。
祭壇の上に積まれた大根のうちを武器商人が天に掲げると、
「うっふ〜ん」「あっは〜ん」
それを合図に一斉に走り散る大根たちーー)

ん゛ぅ゛ゔぅ!(妄想の限界を超えてへんな声が出た)
なぁに愉快な想像をしてるんだいキミは。ヒヒヒヒヒ……。

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