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廃墟
ぼんやりと火に当たっていれば、不意に聞こえた物音。足音、だろうか。
微睡みかけていた意識を引き戻すように、ゆるりと一度だけ瞳を瞬いた。
こんな寒い日に廃墟に来るなんて変わったひともいるものだ、と自分のことを棚に上げつつ、もっふりと埋もれていた毛布から顔を出す。
「……誰」
疑問符のない淡々とした問いかけをひとつ。
男にしては高く女にしては低いその声は硬質で、まるで囁くように。
声を張る気のない誰何は、相変わらず不親切だった。
微睡みかけていた意識を引き戻すように、ゆるりと一度だけ瞳を瞬いた。
こんな寒い日に廃墟に来るなんて変わったひともいるものだ、と自分のことを棚に上げつつ、もっふりと埋もれていた毛布から顔を出す。
「……誰」
疑問符のない淡々とした問いかけをひとつ。
男にしては高く女にしては低いその声は硬質で、まるで囁くように。
声を張る気のない誰何は、相変わらず不親切だった。
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廃墟暮らしにも随分慣れたけれど、隙間風どころか雨も雪も吹き込み放題の廃墟の中はさすがに寒かった。外気と大体同じ気温だ。
いつもの寝床と化していた壊れたソファーをずりずりと暖炉だった場所の前まで移動し、火を焚いて、その温もりを感じながらなんとか過ごしている。
廃墟の中で焚かれた火は、冷たい風に不安定に揺れた。
「……ちょっと、寒い……かな」
は、とまた白い息を吐き出して、特異点だからと気にかけてくれたらしい商人に貰った毛布に包まった。
もとの世界の地下牢では、辛うじて寝床と、格子の外に火は与えられていた。隙間風もなかった。
神官達や信者達にとって、自分という存在はより不幸な身の上にしたいだけで、幸福の還元の為には寿命以外で死なれては困るのだ。暴力や策略は死なないように管理出来るが、病は管理出来ない。なら、病からは遠ざけておきたい。それが総意だったように思う。
だから、この世界の方がその辺りは危ない。
自分はこの世界の人間ではない訳で、うっかり風邪なんてひいたらどうなるのだろうとどうでもいいことを考えながら、ぱちぱちと薪が弾ける音を聞いた。
寒い時期は採取した食べ物がなかなか腐らないからありがたいけれど、指が動きづらいのが困った。
春は暖かくて美しい季節さ、とあの商人が言っていたから、早く春になればいい。
・辛うじて暖炉に火の入った、外気と大体同じ気温の廃墟の中で
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎
・その他、臨機応変