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廃墟
屋根の位置にして、おおよそ3階建て以上の高さがある。普通に高い。
まさか、その高さで他者と遭遇するとは思っていなかったせいで、不意を突かれた。虚空を見つめる猫のように瞬きせずじっと相手を見つめる姿は一見すると平然としているが、これでもそれなりに驚いていた。
警戒を含んだ男の問いに、やっと、また一度瞬きをする。えぇと。これは。多分、スカイフェザー、だろうか。一応、現地の種族については軽くではあるが学んでいた。
「…………、……夜空を。星を、見ようと思って」
先に相手の種族について考えてしまったせいで、返答は、ワンテンポどころかツーテンポくらい遅い。
張ることもしない囁くような声は相変わらず不親切で、男にしては高く、女にしては低い、どこか硬質な声だった。紡ぐ内容は、平凡なものだったけれど。
まさか、その高さで他者と遭遇するとは思っていなかったせいで、不意を突かれた。虚空を見つめる猫のように瞬きせずじっと相手を見つめる姿は一見すると平然としているが、これでもそれなりに驚いていた。
警戒を含んだ男の問いに、やっと、また一度瞬きをする。えぇと。これは。多分、スカイフェザー、だろうか。一応、現地の種族については軽くではあるが学んでいた。
「…………、……夜空を。星を、見ようと思って」
先に相手の種族について考えてしまったせいで、返答は、ワンテンポどころかツーテンポくらい遅い。
張ることもしない囁くような声は相変わらず不親切で、男にしては高く、女にしては低い、どこか硬質な声だった。紡ぐ内容は、平凡なものだったけれど。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎