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廃墟
けれど、乱れた髪や、怪我も増えずに木から降りて来たのがその証拠。
何もかも、本当の、話。
「……夢みたいな夜、だった、な」
夢の中より夢のよう。
廃墟の立て付けの悪い軋む扉をくぐって、一度だけ、夜空を見上げる。
当たり前だけれど、星は、空よりずっと遠い。
今夜は、良い夢が見られそうだった。
何もかも、本当の、話。
「……夢みたいな夜、だった、な」
夢の中より夢のよう。
廃墟の立て付けの悪い軋む扉をくぐって、一度だけ、夜空を見上げる。
当たり前だけれど、星は、空よりずっと遠い。
今夜は、良い夢が見られそうだった。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎