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廃墟

【RP】贄神は星を見る

 夜空が見たい。
 思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
 格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
 もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
 太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。

「……星。月。……空、広い」

 人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
 広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。


・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎

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最後の言葉に満足したのかひとつ頷いて、受け入れられた手をそのままくしゃりと。
指先に触れる長く細い髪は思いの外柔らかく、内心で驚きながらも嫌がる様子も無かったので少しばかり堪能させてもらった。

数度目の往復の後、男の手は離れてゆく。
青年の髪の毛は少しだけくしゃくしゃと乱れていた。
夜の闇の中ではその黒い髪の乱れを視認する事は出来ずに、気付かずそのままの状態となることが避けられなそうだ。
そして、降ろされた手の代わりにもう一度その背に寄り添っていた両の翼が大きく広げられた。
音をたて、ひとつ翼を羽ばたかせればあっという間にその足は地を離れていく。
二度、三度と翼は羽ばたきその度に風を受けて男の身は上へ、上へと。

"おやすみ"
最後にその口元が言葉を形作った様に見えたものの、強く羽ばたいた風の音でその声はきっと届かなかっただろうか。
男の起こした風だけが青年の髪を揺らしながら名残を残した。

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