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廃墟

【RP】贄神は星を見る

 夜空が見たい。
 思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
 格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
 もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
 太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。

「……星。月。……空、広い」

 人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
 広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。


・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎

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 表情を変えること。
 それはきっと滅多にないことで、けれど、それがどれだけ稀有なことであったとしても、笑顔からはずっとずっと、遠い。笑ったのなんて、一体どれくらい前だっただろう。もう、笑い方も、泣き方も、怒り方も覚えていない。激しい感情の波は、もう、ない。
 感情を動かさなければ、疲れない。痛くない。怖くない。辛くない。寂しくも、悲しくも、ない。そうやって何度となく思い込んでいたら本気で忘れてしまったのだから、もう始末に負えない。
 だからか、相手の仏頂面を見ても別に何かを思う訳でもなかった。
 人形のごとき白皙の無表情と、標準装備の仏頂面。
 きっと、さしたる違いはそこにない。

「……これには、難しい」

 自分ができないことを代わりにと望むようなそれに、ほんの少しだけ悩んで、小さく呟くように返した。
 わずかな眉間のしわももう消えて、もとのようにその淡い感情の発露は消えていく。

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