ギルドスレッド
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廃墟
この世界のどこにも、あの神官達と信者達がいない。この世界のどこにも、あの神殿がない。それだけで、随分と口が回るし、随分と気が楽な気がする。
相手からの言葉はわからないではないことだったけれど、相手だって、きっとあんまり他人のことは言えない。気がする。
「……君もあんまりこれのこと言えない」
でも、楽しそうにしているのはなんとなくわかってしまうから、なんだか落ち着かない。長い耳の先がほんのちょっと上がっては、また下がって、またちょっとだけ上がる。この耳はそれなりによく動く。
負の仄暗い感情での愉悦ならともかく、正の感情で楽しそうにされるのには、どうにも慣れていなかった。
風が心地よくて、星が近くて、夢のよう、とはこういうことを言うんだと思った。
今夜は、色々なことがあって。とても、とても不思議な日だ。不思議な、ひとだ。
物語の中のようなひと。
けれど、触れられる、物語の中じゃない、ひと。
相手からの言葉はわからないではないことだったけれど、相手だって、きっとあんまり他人のことは言えない。気がする。
「……君もあんまりこれのこと言えない」
でも、楽しそうにしているのはなんとなくわかってしまうから、なんだか落ち着かない。長い耳の先がほんのちょっと上がっては、また下がって、またちょっとだけ上がる。この耳はそれなりによく動く。
負の仄暗い感情での愉悦ならともかく、正の感情で楽しそうにされるのには、どうにも慣れていなかった。
風が心地よくて、星が近くて、夢のよう、とはこういうことを言うんだと思った。
今夜は、色々なことがあって。とても、とても不思議な日だ。不思議な、ひとだ。
物語の中のようなひと。
けれど、触れられる、物語の中じゃない、ひと。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎