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廃墟
…途中、長い間を空けた後に呟かれた言葉が耳に届いた。
同時に腕に感じる微かな力の感触。
相手の表情は体勢とその長い髪の波によって見ることは出来なかったが、言葉には確かに己の意志に反する音が込められていた。
「………。」
子に縋られる、という感じに近いのだろうか。
生を受けてたったの二十数年。己の子を持ったことは無い。
その上相手の年齢すらもわからぬのに「子」と表すのも如何なものかとは思ったが、その行動は何処か近しいものの様に感じられた。
虚勢、自信、鼓舞。
それらの思いを込めた言葉は口にしてきた。
けれど、"約束"にはしなかった。相手の言葉には返さぬままで、近づいていく地面へと視線を向けた。
同時に腕に感じる微かな力の感触。
相手の表情は体勢とその長い髪の波によって見ることは出来なかったが、言葉には確かに己の意志に反する音が込められていた。
「………。」
子に縋られる、という感じに近いのだろうか。
生を受けてたったの二十数年。己の子を持ったことは無い。
その上相手の年齢すらもわからぬのに「子」と表すのも如何なものかとは思ったが、その行動は何処か近しいものの様に感じられた。
虚勢、自信、鼓舞。
それらの思いを込めた言葉は口にしてきた。
けれど、"約束"にはしなかった。相手の言葉には返さぬままで、近づいていく地面へと視線を向けた。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎