ギルドスレッド
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廃墟
「わ……!……わ、あ、空、だ……」
文句も疑問も、鉤爪の脚で強く蹴られた枝がしなってのちの、一瞬の浮遊感に持って行かれる。
ぶわりと夏の名残りの生温い風が巻き上がって、長い髪が煽られて翻った。
思わず漏れた感嘆に、心奪われたように呆けた声が続いた。大きく見張ってまん丸になった瞳は、伏せて地を見てばかりの時より、余程幼く素直だ。
空が、とても近い。木の上に登った時以上に、ずっと。足の下に何もないのがひどく落ち着かないはずなのに、そんなのどうでもよくなるくらいに、空を飛んでいるという事実に心を奪われていた。
「…………、……死なないなら、いい」
やがて、やっと一言ぽつりと落とす。
腰に回った相手の腕に添えた掌だけが、少しだけ力を込めることで淡々とした声に反する気持ちを伝えた。
文句も疑問も、鉤爪の脚で強く蹴られた枝がしなってのちの、一瞬の浮遊感に持って行かれる。
ぶわりと夏の名残りの生温い風が巻き上がって、長い髪が煽られて翻った。
思わず漏れた感嘆に、心奪われたように呆けた声が続いた。大きく見張ってまん丸になった瞳は、伏せて地を見てばかりの時より、余程幼く素直だ。
空が、とても近い。木の上に登った時以上に、ずっと。足の下に何もないのがひどく落ち着かないはずなのに、そんなのどうでもよくなるくらいに、空を飛んでいるという事実に心を奪われていた。
「…………、……死なないなら、いい」
やがて、やっと一言ぽつりと落とす。
腰に回った相手の腕に添えた掌だけが、少しだけ力を込めることで淡々とした声に反する気持ちを伝えた。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎