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廃墟
「……ない、と、思うけれど。多分」
自分はせいぜい怪我をしたりするくらいで済んでいるから、多分、おそらく、きっと、死なない。と、思う。
断定出来ないせいで、その言いようはとても曖昧で、淡々と紡ぐ声は変わらないにもかかわらず、自信がなさそうに聞こえる。見上げていた視線も、自信のなさを表すように少しだけ相手から外れた。
何しろ、この世界に来てまだ数日だ。要するに、このギフトを手に入れてからまだ数日。検証するには日数が短すぎる。まあ、下手をすると検証結果が出るイコール自分の死、な訳だが。
繊細ではないと言ったって、怪我をして飛べなくなりでもしたら困るだろうに。本当にいいのだろうかと見上げていたら、不意に途切れた相手の言葉。
「……むしろ?」
相手が何を思っていたかなど知りもせず、不思議そうに一度瞳を瞬いて、続きを促すように静かに同じ言葉を繰り返した。
自分はせいぜい怪我をしたりするくらいで済んでいるから、多分、おそらく、きっと、死なない。と、思う。
断定出来ないせいで、その言いようはとても曖昧で、淡々と紡ぐ声は変わらないにもかかわらず、自信がなさそうに聞こえる。見上げていた視線も、自信のなさを表すように少しだけ相手から外れた。
何しろ、この世界に来てまだ数日だ。要するに、このギフトを手に入れてからまだ数日。検証するには日数が短すぎる。まあ、下手をすると検証結果が出るイコール自分の死、な訳だが。
繊細ではないと言ったって、怪我をして飛べなくなりでもしたら困るだろうに。本当にいいのだろうかと見上げていたら、不意に途切れた相手の言葉。
「……むしろ?」
相手が何を思っていたかなど知りもせず、不思議そうに一度瞳を瞬いて、続きを促すように静かに同じ言葉を繰り返した。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎