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廃墟
男は過去を思い不幸を受け入れる。
犯した罪の分だけの災いを、むしろ歓迎すらしている程だった。
けれどそれを今目の前の青年に対して口に出して言ったところで余計な心算を増やすだけ。
出会ったばかりの青年に吐き出す事でもない。
余計な事を口走りそうになった口を固く結び、思考を振り払う様にオズウェルを抱える腕にぐっと力を込めた。
「とにかく、オレの事は構わなくていい。放ってお前に落ちられでもしたらそっちの方が寝覚めが悪いからな。」
大樹を掴む鉤爪に踏ん張りを加え、膝を曲げて身を低くしていきながらゆっくりと飛ぶ体勢へ。身を屈めた分だけ翼は大きく広がりその羽に風を受ける。
飛び立つまで、あと数秒。
「舌を噛むなよ」
先に忠告した事を、もう一度。
飛び立つ前の感覚は何度経験しようが心地良さは変わらずにその身を湧き立たせる。
どくりと鼓動が脈打つ感覚を感じ取りながら自然とその口角は上がっていっていた。
星の話を、置き去りにして。
犯した罪の分だけの災いを、むしろ歓迎すらしている程だった。
けれどそれを今目の前の青年に対して口に出して言ったところで余計な心算を増やすだけ。
出会ったばかりの青年に吐き出す事でもない。
余計な事を口走りそうになった口を固く結び、思考を振り払う様にオズウェルを抱える腕にぐっと力を込めた。
「とにかく、オレの事は構わなくていい。放ってお前に落ちられでもしたらそっちの方が寝覚めが悪いからな。」
大樹を掴む鉤爪に踏ん張りを加え、膝を曲げて身を低くしていきながらゆっくりと飛ぶ体勢へ。身を屈めた分だけ翼は大きく広がりその羽に風を受ける。
飛び立つまで、あと数秒。
「舌を噛むなよ」
先に忠告した事を、もう一度。
飛び立つ前の感覚は何度経験しようが心地良さは変わらずにその身を湧き立たせる。
どくりと鼓動が脈打つ感覚を感じ取りながら自然とその口角は上がっていっていた。
星の話を、置き去りにして。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎