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廃墟
"ギフト"
確か、混沌世界から与えられたものだったか。望まぬせいか未だ己の手の内には無い代物。
彼の所有するギフトはどうやら随分と犠牲の偏りがありそうだが、説明を聞いた上で成程と考え込んでいた理由に納得した。
「…そのギフトで、死ぬ事はないんだろう?」
暴れることなく身を預けている青年に問い掛ける。
傷なんて今までに数えきれない程つけてきた。そのギフトで例えば不運を招いて傷を負う羽目になったとしても、それは男にとって大した問題ではない。
命さえあればあとはどうとでもなる。
例え不安気な様子の彼がいくら気に掛けてくれたところで、その懸念材料は男の手を引かせる決定打とは成り得ないだろう。
「未来の不幸を憂いて足踏みをするほど、繊細には出来ていないんだ、オレは」
死は訪れるべき時に訪れる。
どう抗おうと、それを避ける事など出来ようはずもないしする気もない。
「……むしろ、」
言葉は途中で途切れ、口は閉ざされる。
確か、混沌世界から与えられたものだったか。望まぬせいか未だ己の手の内には無い代物。
彼の所有するギフトはどうやら随分と犠牲の偏りがありそうだが、説明を聞いた上で成程と考え込んでいた理由に納得した。
「…そのギフトで、死ぬ事はないんだろう?」
暴れることなく身を預けている青年に問い掛ける。
傷なんて今までに数えきれない程つけてきた。そのギフトで例えば不運を招いて傷を負う羽目になったとしても、それは男にとって大した問題ではない。
命さえあればあとはどうとでもなる。
例え不安気な様子の彼がいくら気に掛けてくれたところで、その懸念材料は男の手を引かせる決定打とは成り得ないだろう。
「未来の不幸を憂いて足踏みをするほど、繊細には出来ていないんだ、オレは」
死は訪れるべき時に訪れる。
どう抗おうと、それを避ける事など出来ようはずもないしする気もない。
「……むしろ、」
言葉は途中で途切れ、口は閉ざされる。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎