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廃墟
「生きるための、力」
ぽつりと小さく呟いて、ほんの少しだけ眩しそうに瞳を細めた。
視界を遮られると、ある意味では翼が見放題な訳で。まじまじと見つめる翼は、やっぱりとても綺麗だった。
誰かに腰に手を回されるようなことは、生きて来て、地味に初めてじゃあないだろうか。というより、自分を害す目的以外でここまで誰かと密着することが初めてだった。
落ち着かない。けれど、それでもそわそわするだけで比較的落ち着いていられるのは、相手を安全だと思い始めているからだ。
わかった、と返すより先に相手が自分の様子に気づくと、また少しだけ悩むように瞳を伏せて。
「……そうじゃ、ない。その。これのギフトが、少し厄介で」
言いづらそうに、相変わらずの聞き取りづらい小さな声で答えた。
飛んでみたかったから、飛べるのは、実はちょっと嬉しい。でも、不運に巻き込むのは嫌だなとも思う。
ぽつりと小さく呟いて、ほんの少しだけ眩しそうに瞳を細めた。
視界を遮られると、ある意味では翼が見放題な訳で。まじまじと見つめる翼は、やっぱりとても綺麗だった。
誰かに腰に手を回されるようなことは、生きて来て、地味に初めてじゃあないだろうか。というより、自分を害す目的以外でここまで誰かと密着することが初めてだった。
落ち着かない。けれど、それでもそわそわするだけで比較的落ち着いていられるのは、相手を安全だと思い始めているからだ。
わかった、と返すより先に相手が自分の様子に気づくと、また少しだけ悩むように瞳を伏せて。
「……そうじゃ、ない。その。これのギフトが、少し厄介で」
言いづらそうに、相変わらずの聞き取りづらい小さな声で答えた。
飛んでみたかったから、飛べるのは、実はちょっと嬉しい。でも、不運に巻き込むのは嫌だなとも思う。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎