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廃墟
「生きる為に、必要だったからな」
力はその為につけたのだと、相手の言葉に返す様に。
随分とこの翼が気に入ったらしいオズウェルの視線を僅かむず痒く感じて、広げた翼の羽の先で自分の視界と相手の視界を遮る様に顔の前に壁を作った。
真っ直ぐな視線には、どうにも耐性がつかない。
了承は得られたので、取られた手を引き、抱える様に腰に片腕を回す。
腕と同様、細い腰回り。とは言ってもそこはやはり男の骨格。
流石に回した腕の間に空いた隙間は広くはなかったが、それでも"薄い"のには変わりなかった。
「なるべくゆっくり降りるが、余り動かないようにな」
大きく動かれればその分バランスも崩れる。下手をすれば落ちる可能性も出てきて危険だ。
加えて、舌を噛まないようにとも注意して飛ぶ体勢を取ろうと翼を再び広げる。
…と、不意に見たオズウェルの様子が随分と考え込んでいるように見えて。
力はその為につけたのだと、相手の言葉に返す様に。
随分とこの翼が気に入ったらしいオズウェルの視線を僅かむず痒く感じて、広げた翼の羽の先で自分の視界と相手の視界を遮る様に顔の前に壁を作った。
真っ直ぐな視線には、どうにも耐性がつかない。
了承は得られたので、取られた手を引き、抱える様に腰に片腕を回す。
腕と同様、細い腰回り。とは言ってもそこはやはり男の骨格。
流石に回した腕の間に空いた隙間は広くはなかったが、それでも"薄い"のには変わりなかった。
「なるべくゆっくり降りるが、余り動かないようにな」
大きく動かれればその分バランスも崩れる。下手をすれば落ちる可能性も出てきて危険だ。
加えて、舌を噛まないようにとも注意して飛ぶ体勢を取ろうと翼を再び広げる。
…と、不意に見たオズウェルの様子が随分と考え込んでいるように見えて。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎