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廃墟
自分を運ぶことで相手にまで連鎖的に不運が発動しないといいのだけれど、とぼんやり考える。
何しろ、このギフトには不運が強制的に常時セットだ。
ギフトになってからは己の不幸を糧に幸運を放出する体質は弱くなり、指向性の選択権は与えられた。けれど、セットの不運は制御出来ないし、こうしてギフトになってから他人と接触することもほぼなかったから、自分の不運に相手を巻き込まないかもわからない。
登った時は普通に鈍臭くてずり落ちたり踏み外したりする以外に、途中で鳥の巣から怒った親鳥に突かれたり、枝を這っていた蛇を握ってびっくりして手を離す、などの地味な被害があった。
これ、言っておいた方がいいだろうか。でも、それで手が引かれてしまったら、どうしよう。
ギフトに感謝してはいるけれど、それと、このお人好しを巻き込むかは別の問題だ。悩む。
「登らない方向……外に出る」
星を見るには、外に出ないといけないらしい。
何しろ、このギフトには不運が強制的に常時セットだ。
ギフトになってからは己の不幸を糧に幸運を放出する体質は弱くなり、指向性の選択権は与えられた。けれど、セットの不運は制御出来ないし、こうしてギフトになってから他人と接触することもほぼなかったから、自分の不運に相手を巻き込まないかもわからない。
登った時は普通に鈍臭くてずり落ちたり踏み外したりする以外に、途中で鳥の巣から怒った親鳥に突かれたり、枝を這っていた蛇を握ってびっくりして手を離す、などの地味な被害があった。
これ、言っておいた方がいいだろうか。でも、それで手が引かれてしまったら、どうしよう。
ギフトに感謝してはいるけれど、それと、このお人好しを巻き込むかは別の問題だ。悩む。
「登らない方向……外に出る」
星を見るには、外に出ないといけないらしい。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎