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廃墟
「降りるぞ、立て」
座ったままの体勢でいられては抱えるものも抱えられない。
相変わらずの武骨な物言いで立つようにそう促した。
言葉の調子から、どうやら相手は心配をしているのだろうと受け取れる。確かに片腕に人一人を抱え運ぶともなれば相当な力がいる。重量が偏る分飛ぶ時のバランス取りも難しい。
しかし男にとって目の前の青年を抱えて飛ぶ事など大して難しい事では無かった。
元来、種の祖先であるイヌワシは狩りの際には己の体躯よりも二回り大きな獲物でさえ狩る事も珍しくはない。男はその血を継いでいる。さらに言えば部族での狩猟の際にもそのような事等は日常茶飯事。
己よりも小さな者を運ぶ事など、造作もない。
「心配するな、そんな軟な鍛え方はしていない。落としたり等しないさ。」
伸ばされ広げられた手を相手の目の前に、その手が取られるのを待つ。
しかし続いた青年の言葉に小さな懸念が再来した。
「可能ならここに登らない方向性で頼む…」
座ったままの体勢でいられては抱えるものも抱えられない。
相変わらずの武骨な物言いで立つようにそう促した。
言葉の調子から、どうやら相手は心配をしているのだろうと受け取れる。確かに片腕に人一人を抱え運ぶともなれば相当な力がいる。重量が偏る分飛ぶ時のバランス取りも難しい。
しかし男にとって目の前の青年を抱えて飛ぶ事など大して難しい事では無かった。
元来、種の祖先であるイヌワシは狩りの際には己の体躯よりも二回り大きな獲物でさえ狩る事も珍しくはない。男はその血を継いでいる。さらに言えば部族での狩猟の際にもそのような事等は日常茶飯事。
己よりも小さな者を運ぶ事など、造作もない。
「心配するな、そんな軟な鍛え方はしていない。落としたり等しないさ。」
伸ばされ広げられた手を相手の目の前に、その手が取られるのを待つ。
しかし続いた青年の言葉に小さな懸念が再来した。
「可能ならここに登らない方向性で頼む…」
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎