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廃墟
登って来た時は、どこに足をかけたのだったか。
登るだけ登って降りられなくなった猫のようなことを考えていたら、不意の提案。手を貸してくれるとは聞いていたけれど、まさか運んでもらえるとは思っていなくて、思わずきょとんとした様子で相手を見返した。
何度か瞳を瞬き、相手の言葉を飲み込む。
抱えて、運んで、飛んでくれる、らしい。多分。
「……問題はない、けれど。いいの」
おず、と問い返す声。
いいのだろうか。というか、重くないのだろうか。
戸惑いは、触れられることへのものではなく、そこまでしてもらえることへの方が大きい。まして、いくら痩せぎすとはいえ男ひとりを運ぶのは、苦ではないのだろうか。
「邪魔じゃ、ない。……ん。星は、また見に来る」
首を横に振って否定しながら、次への意欲をほんの少しだけ覗かせる。
要するに、またこの大樹の上へと登る気があるということだが。
登るだけ登って降りられなくなった猫のようなことを考えていたら、不意の提案。手を貸してくれるとは聞いていたけれど、まさか運んでもらえるとは思っていなくて、思わずきょとんとした様子で相手を見返した。
何度か瞳を瞬き、相手の言葉を飲み込む。
抱えて、運んで、飛んでくれる、らしい。多分。
「……問題はない、けれど。いいの」
おず、と問い返す声。
いいのだろうか。というか、重くないのだろうか。
戸惑いは、触れられることへのものではなく、そこまでしてもらえることへの方が大きい。まして、いくら痩せぎすとはいえ男ひとりを運ぶのは、苦ではないのだろうか。
「邪魔じゃ、ない。……ん。星は、また見に来る」
首を横に振って否定しながら、次への意欲をほんの少しだけ覗かせる。
要するに、またこの大樹の上へと登る気があるということだが。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎