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廃墟
人生のほとんどを神殿で過ごしていたとはいえ、実年齢は長命種のそれだ。けれど、その外見は十代後半から二十代。おまけにまともな生活はしていないのだから、痩せ細った身体も、身長が伸びなかったのも、多分仕方がないことだ。おそらく、相手の想像する通りに非力だ。残念ながら。
観察する視線に気づくと、ゆったりとした動きで小首を傾げる。別に見られることは気にならないけれど、どうかしたのだろうか。
相手の疑念は恐らくは当たりだ。木の上に来いと相手が言ったなら、異を唱えることなく、ごく素直に了承してまた登っただろう。
「……わかった、待つ」
危機は、無事に未然に防がれた。
じんわり眠気を感じながら、少しだけ危なっかしい動きで身体を捻って下を覗き込む。
当然高いし、下に明かりがある訳でもないから当然暗い。
……これ、どうやって降りよう。
ここは、廃墟の上に飛び出た大樹から伸びた枝。約三階建て。の、屋根より上。
観察する視線に気づくと、ゆったりとした動きで小首を傾げる。別に見られることは気にならないけれど、どうかしたのだろうか。
相手の疑念は恐らくは当たりだ。木の上に来いと相手が言ったなら、異を唱えることなく、ごく素直に了承してまた登っただろう。
「……わかった、待つ」
危機は、無事に未然に防がれた。
じんわり眠気を感じながら、少しだけ危なっかしい動きで身体を捻って下を覗き込む。
当然高いし、下に明かりがある訳でもないから当然暗い。
……これ、どうやって降りよう。
ここは、廃墟の上に飛び出た大樹から伸びた枝。約三階建て。の、屋根より上。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎