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廃墟
でも、ここはもとの世界ではないし、自分の酔狂に付き合って翼まで触らせて、降りる時は手伝ってくれるなんて言う相手を、もとの世界の住人達程度と同じに扱うのは、きっととても失礼で。
「…………知りたい、けれど。対価になるようなもの、これは、持ってない」
微妙な間の後、少しだけ視線を伏せて呟き返す。
色々考えた結果、何かをして貰うに見合うだけのものが返せないことに、今更ながらまず思い至った。
自分は、これは、相手のそれに対して返せるだけの対価がない。技術は力だ、知恵だ、相手が身につけて来た経験だ。この身ひとつしか持たない自分が、何を対価にしたらいいのだろう。
「…………知りたい、けれど。対価になるようなもの、これは、持ってない」
微妙な間の後、少しだけ視線を伏せて呟き返す。
色々考えた結果、何かをして貰うに見合うだけのものが返せないことに、今更ながらまず思い至った。
自分は、これは、相手のそれに対して返せるだけの対価がない。技術は力だ、知恵だ、相手が身につけて来た経験だ。この身ひとつしか持たない自分が、何を対価にしたらいいのだろう。
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思い立って、廃墟を貫いて立つ樹木の枝に足をかけて、両手で身体を引き上げるように木の上へ。無造作なそれにがさがさと枝葉が顔や手を打つが、痛み慣れしている分、あまり気にはならなかった。
格闘することしばらく。やっと屋根の上の高さに顔を出すことが出来て、小さく一息を吐く。
もとから長い幽閉と暴行で随分弱っていた上、それなりにあったレベルまで1に戻っているこの身体は、結構どんくさい。
太い枝に腰を下ろすと、片足首に嵌ったままの枷が千切れた鎖と擦れて鈍い音を立てた。
「……星。月。……空、広い」
人と会話をしないとすぐに端的どころか単語になりがちな呟きを零して、まだ夏の気配がしっとりと残る生温い夜風に左右異色の瞳を細める。
広くて高い、どこまでも続くような夜空が、とても心地よかった。
・異世界からやって来て、ほんの数日。廃墟の屋根の上の、ある日のこと。
・入室可能数:1名
・どなたでも歓迎